日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『うめぼしくんのおうち』 モカ子

(月刊「こどもの本」2014年1月号より)
モカ子さん

おにぎりワンルーム

 食べるたび思うのです。

 おにぎりの中は、いつも窮屈そう。

「おにぎりは、ワンルーム。お弁当は、3LDKやなぁ」

 引っ越し魔の私は、物件情報誌をお昼に見つつ、ぼんやりそう思っていました。

「そういえば、おにぎりの中の梅干も引っ越ししたいやろなぁ」

 そうして完成したのが今回の絵本『うめぼしくんのおうち』です。

 居心地の良い、うめぼしくんの住むおにぎり部屋にたくさんの友達が、どんどん遊びにやってきます。皆、おいしそうな友達です。

 たらこさん、しゃけくん、こんぶくん、いくらの兄弟たち。

 せまいワンルームですから、すぐに部屋は満員御礼! おにぎりの部屋が、壊れちゃうんじゃないの?!

 うめぼしくんの新しいおうち探し、一体どうなる? どうする?!

 うめぼしくんと時を同じくして、実際、またまた私も八回目の引っ越しをしました。

 せまいワンルームに住んでいたので、うめぼしくんの気持ちが、本当によーくわかります。

 家は、幸いまだ壊したことはありませんが、友達は三人以上呼べませんし、本やら紙の重みで、床が抜けないかドキドキな毎日。

 引っ越ししてから、新しい環境、ちょっとだけ広くなった新しい部屋に意味もなく、ワクワクします。

 最終ページ、ちょっとホッとしたような、うれしそうな顔のうめぼしくん。
描きながら「ああ、これは、私でもあるのかなぁ」と思いました。

 うめぼしくんほど、広い部屋にはまだ引っ越し出来ませんが…。

「3さいからのユーモアえほん」シリーズということで、うーんうーんと最初は悩みに悩みました。悩んだ末、小さな読み手さんたちと一緒に遊ぶつもりで、ゆるやかに楽しく、のびやかに描いていきました。

 毎回読むたびに、発見がある!

 そんな風に何度も楽しんで頂ければ、うれしいです。

(もかこ)●既刊に『ルンバさんのたまご』。

「うめぼしくんのおうち」
ひかりのくに
『うめぼしくんのおうち』
モカ子・さく・え
本体880円