日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『クイズ研究会チームスリー』 まはら三桃

(月刊「こどもの本」2023年2月号より)
まはら三桃さん

クイズ人気復活

 流行は繰り返すと言います。最近は昭和レトロブームらしく、八十年代の歌謡曲が世界的に人気だそうです。ただし、アップテンポになり、おしゃれな感じにアレンジされて、名前もシティポップと言うのだそうです。

 昔、中島らもさんが「流行はリバイバルするが、同じところを回るのではなく、らせん階段状に上っていく」とおっしゃっていましたが、本当に進化しながら繰り返すんですね。

 クイズ人気も復活している印象がありますが、これまた進化しているなと感じます。今や、クイズを生業とするプロもいるほど。プロは正解率が高いのはもちろん、ボタンの早押しの速度も段違いです。問題の途中、あるいはまだ画像が出ただけなのに、正解を出したりします。すごいな、と思う一方、考える暇がなくて、ちょっと残念。

 私は子どもの頃からクイズ番組が好きでした。いちばん好きだったのは、十問正解すれば夢のハワイに行けるという「アップダウンクイズ」(古っ)。ペアで一つのゴンドラに乗り、正解すると一段上がり、不正解なら一番下に下がる過酷なルール。さらに二回続けて間違うと、ゴンドラから降りなくてはなりません。そんなふうに行きつ戻りつしながら、最後の問題で九段から一気に落ちるということもしばしばでした。そんな苦労の末に、やっと行けるのがハワイでした。

 当時、テレビは家庭だんらんの中心にありましたから、うちの家族もこの番組で盛り上がっていました。たまに子どもでもわかる問題が出ると、張り切って答え、ハワイ行きが出ると、自分のことのように喜んだものです。難易度のさじ加減さえあれば、老若男女問わず楽しめるのがクイズの良さです。この本も、家族みんなで楽しんでいただければと思います。

 ちなみに「アップダウンクイズ」が基準になっているせいで、私はまだハワイに行ったことがありません。おいそれと行ける場所ではないのです。

(まはら・みと)●既刊に『鉄のしぶきがはねる』『日向丘中学校カウンセラー室』『零から0へ』など。

『クイズ研究会チームスリー』
金の星社
『クイズ研究会チームスリー』
まはら三桃・作/とろっち・装画
定価1,650円(税込)