日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『くまの子ウーフのたからもの』 広瀬 弦

(月刊「こどもの本」2022年11月号より)
広瀬 弦さん

グニグニから生まれた新しいウーフ

 児童書業界の隅っこでコソコソ絵を描いてきた僕になぜこんなに有名な本の話が来たのか全然わかりませんが、新しい「ウーフ」の絵を描くという今までもこれからもきっとないだろう仕事だったので喜んでやらせてもらうことにしました。

 引き受けたのは良いのですが考えてみたら今までの「ウーフ」と同じ絵は絶対に描けない事に気づきました。困りました。大勢の人たちの頭の中にある「ウーフ」のイメージを壊さないようにするというミッションに自分でも気づかず緊張していたのか、新しい「ウーフ」を作るのに悩み始めました。借りた本の挿絵やぬいぐるみを見ながらいくつかくまの子を描いてみてもなかなかこれだというものになりません。

 ぼーっとしながら部屋をウロウロしていると引き出しの中に粘土を見つけました。それをグニグニこねてくまの子を形にしてみたらこれがなかなかいい感じです。これは本格的に作ってみようと思い、ネットでいろいろ探した結果、オーブンで焼くと固まるフィギュア制作用の白い粘土を見つけました。いいぞ。ボタンをポチッとして白い粘土の到着をまたぼーっとしながら待ち、荷物が届くと早速グニグニし始めます。楽しくて手が止まりません。形を作って焼いて直してまた焼いて、丸二日間粘土をこねていました。自分でも惚れ惚れするくらいのくまの子が出来上がり、机の上に飾ってニヤニヤしていました。いやあ、よかったよかった。

 ん。何か忘れてるな。

 あーっ。そういえば絵を描かないと。慌てて絵の具と筆を持って、作ったばかりのくまの子の人形を見ながら描いたのが『くまの子ウーフのたからもの』です。

 数日間いったい何をしていたのかわかりませんが、新しいウーフを描かせていただきありがとうございました。ウーフのファンの方々や関係者のみなさん、今の子どもたちに気に入ってもらえたら、隅っこでコソコソ絵を描いている僕もこれから少しだけ真ん中に近づけるかも知れません。

(ひろせ・げん)●既刊に『あ』『とりかえっこちびぞう』「斉藤洋の西遊記」シリーズなど。

『くまの子ウーフのたからもの』
ポプラ社
『くまの子ウーフのたからもの』
神沢利子・作/広瀬 弦・絵
定価1,540円(税込)