日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『めがねどろぼう』 桂 文我

(月刊「こどもの本」2022年11月号より)
桂 文我さん

落語の世界を絵本や紙芝居で

 お囃子(※太鼓や笛)の仕事で、日本の芸能を親子で楽しむ会へ行ったのが、約三十五年前。

 曲芸や奇術は盛り上がりましたが、先輩が演じる落語では、会場全体がザワつき、雑談の山となりました。

 終演後、その先輩が一言、「子どもに、落語はあかん!」。

 私は小学生の頃から落語を楽しんでいたので、「いや、そんなはずはない。状況を整えた落語だけの会を設定すれば、十分楽しんでもらえるにちがいない」と考え、三重県四日市の子どもの本の専門店メリーゴーランドの店主・増田喜昭氏の絶大な協力も得て、親子で楽しむ落語会「おやこ寄席」を立ち上げ、全国展開していったのです。

「おやこ寄席」の基本姿勢は「大人だけ、子どもだけで楽しむのではなく、舞台の芸が理解できる、年齢を超えた方々の集合体で楽しんでいただく」だけに、その状況を整えることに細心の注意を払ってきました。

 その中で、「ことば」を理解するという観点で、小学生以上という年齢制限を設定したため、幼稚園児・保育園児に生の落語を楽しんでいただくことはできなかったのです。

 それを打開してくれたのが、落語絵本・落語紙芝居であり、要請があれば、幼稚園・保育園へ出掛け、絵本を読み、紙芝居を演じました。

 その後も数多くの落語絵本・落語紙芝居を刊行することができた上、長年の腹案だった「でっち絵本」「まぬけなどろぼう」のシリーズを刊行することもできたのです。

 最新刊『めがねどろぼう』は、荒戸里也子さんの、思わず笑ってしまう、素敵な絵により、この落語の美味しさを十二分に発揮することができました。

 今後も様々なテーマで、落語絵本・落語紙芝居を刊行する予定ですので、幼い子どもからお年寄りまで、落語の世界で遊んでいただきますように。

 落語の世界は、とても懐かしく、ユニークな世界です!

(かつら・ぶんが)●既刊に『えんぎかつぎのだんなさん』『おしりつねり』『もぐらどろぼう』など。


BL出版

桂 文我・ぶん/荒戸里也子・え
定価1,540円(税込)