日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『あなのなかから…』 さいとうしのぶ

(月刊「こどもの本」2022年7月号より)
さいとうしのぶさん

あなのなかから…想像力!

 近所のお地蔵さんの前を通った時のこと。何やら鳥のひなの声。すぐ横のひょろっとした木を見上げてみると、木に丸い穴が開いていて、そこに親鳥が餌を運んできていた。なんと、コゲラというキツツキ! 珍しいので、しばし眺めていた。何日か経って、あの雛は、どうなったかしらと木の穴を探していたら、ない! なんで? 穴はどこ行っちゃったの? よーく見ると、その穴をふさぐかのように大きくなった2羽の雛が顔を出していた。その顔があまりにもあどけなくて、笑ってしまった。同時に「あんたたち、穴の中から、ばあ!だね」と、話しかけていた。

 おおっ! このフレーズ、なんかいいなあ。ということで、早速絵本にしてみた。いろんな穴、地面の穴や、木の穴、壁の穴、氷の穴に、トンネルは、まさに山の穴! そして、そこから飛び出してくる生き物も様々だ。穴から何かが飛び出してくれば、雛に驚いた私のように、そばにいた人はいろんな反応をするだろう。

 そうして何とかまとまりそうになったが、通常の小さい子向けの絵本はたいてい二四ページ。けれど、そのページ数では、着地点、いわゆる関西でいうところのオチまでが表現できない……。

 そんな時、ちょうどこのアイデアを気に入って下さったあすなろ書房の編集の方が、「ページを増やしましょう!」と言って下さったので、うまく1冊の絵本としてまとめることができた。表紙もデザイナーさんのおかげで、とても素敵な絵本に仕上がった。

 穴から何が出てくるか……想像力を膨らませて、子どもたちとあてっこしながら、読み進めていただきたい。

 盛りあがること、まちがいなし!

●既刊に『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』(みねよう/原案)『おべんとうばこのうた』『る』など。

『あなのなかから…』
あすなろ書房
『あなのなかから…』
さいとうしのぶ・作
定価1,320円(税込)