日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『しんぱいなことが ありすぎます!』 工藤純子

(月刊「こどもの本」2022年5月号より)
工藤純子さん

心配しすぎませんように!

 小学一年生のころ、心配性の娘は、毎日すべての教科書を持って学校に行っていました。宿題をやり忘れた日には、「今日は、学校を休む」と玄関でしくしく泣きだす始末。親の私は訳も分からず「それくらい、大丈夫だから」と、おろおろするばかり。しかしある日、ハッと思い出しました。

 もう何十年も前のこと。そういえば私も、その日使わない教科書までランドセルにつめこんで、毎日学校に行っていたのです。なぜかというと、先生に叱られたり、みんなの前で「忘れました」と言ったりするのが怖いから。忘れ物をしてしまったときの、あの絶望感! 大人にとっては些細なことでも、子どもにとっては、世界がひっくり返るほどの大問題でした。

 忘れることなんて誰にでもあります。今思えば、忘れたら借りればいいし、なくてもなんとかなるもの。でも、子どものころは「忘れ物をしてはいけない」という強迫観念でいっぱいでした。初めての経験ばかりの子どもの頃は、真面目な子ほど、緊張して過ごしているのかもしれません。

 小学校時代は、どんどん失敗していい時期だと私は思っています。失敗すればそこから学びがあるし、失敗した後どうするかの方が、大切だと思うからです。うちの息子は、忘れ物やうっかりで、先生に叱られてばかり(まさに、かずまタイプ!)。そのせいで、先生に助けを求められず、危うく大きな事故につながるところでした。

 教室には、ももみたいに心配性な子もいれば、かずまのように楽天的な子もいます。みんな違うし、得意不得意もあります。いいところを認め合い、互いに助け合える。学校は、そんな場所であって欲しいと思うのです。

 失敗、おおいに結構! 失敗を恐れていては何もできません。大人にできることは、子どもが安心して失敗し、不安を口にだせる環境を作ることではないでしょうか。

 子どもたちが、心配しすぎませんように。この本のももみたいに、肩の力を抜いてもらえたら嬉しいです。

(くどう・じゅんこ)●既刊に『サイコーの通知表』『てのひらに未来』「リトル☆バレリーナ」シリーズなど。

『しんぱいなことが ありすぎます!』
金の星社
『しんぱいなことが ありすぎます!』
工藤純子・作/吉田尚令・絵
定価1,320円(税込)