こどもの本

私の新刊
『アサギマダラの手紙』 横田明子

(月刊「こどもの本」2020年3月号より)
横田明子さん

アサギマダラに魅せられて

 アサギマダラの存在を知ったのは、三年ほど前の冬。鹿児島県・種子島で花の群生地をひらひらと舞う姿を映しだしたテレビの旅番組の中でした。色や模様の美しさはもとより、私が惹きつけられたのは、その生態です。秋になると、北の地から何千キロもかけて、南まで「渡りをする」というのです。

 あんな小さな体で、一体、どうやってそんなに長い旅ができるのだろう。

 早速、科学雑誌等で調べると、全国各地で、アサギマダラの渡りの謎の調査活動がされていることもわかりました。はねに、捕まえた場所と日づけ、捕まえた人の名前を書いて空へ放し、その行き先や、かかった日数を調べます。

 とは言え、文字を書かれたアサギマダラが、どこかで見つかる確率は、ごくごくわずか。それでも、そんな人々の思いを託された蝶を、だれかが見つける奇跡の瞬間は確かにあるようです。

 これを知った時、私の中で、渡りをするなんとも不思議なアサギマダラをモチーフとした物語が湧いてきました。

 主人公は、メイちゃん。友だちとけんか別れをしてしまった女の子です。どうしたら相手にあやまれるだろう。ずっと考えていたメイちゃんに「ぼくが手紙になる」と申し出たのが、いっぴきのアサギマダラ、フウでした。

 フウ自身にも、友だちとけんかをして後悔した過去があったので、メイちゃんの思いがよくわかったからです。

 フウは、自身が手紙となって、南の島へ向かいます。翅がもうやぶれそうになるまで、何日も何日も飛び続けます。翅に書かれたメイちゃんの気持ちを届けるために……。

 今では、メールやラインで、自分の思いは瞬時に、簡単に伝えられます。

 でも、フウのように、朝も昼も夜も、山を越え海を越えて、必死に届けたお便りをもらったら、その思いは、友だちに、より深く強く伝わるにちがいありません。

 手紙は、心と心をつなぎ合います。

 この作品を読んで、だれか大切な人に「手紙を書いてみようかな」、そんなふうに思ってもらったらうれしいです。

(よこた・あきこ)●既刊に『カホのいれかわり大パニック』『四重奏デイズ』『手と手をぎゅっとにぎったら』など。

『アサギマダラの手紙』"
国土社
『アサギマダラの手紙』
横田明子・作/井川ゆり子・絵
本体1,300円