こどもの本

私の新刊
『ティラノサウルス とびだす解剖学ガイド』 小川浩一

(月刊「こどもの本」2019年12月号より)
小川浩一さん

恐竜の骨と肉

 本書『ティラノサウルス』は、副題に「とびだす解剖学ガイド」とあるように、しかけ絵本だ。ページを開くと絵がとびだすし、表皮をめくると筋肉が見えたりもする。それだけでも楽しい本だが、「しかけ」はストーリーにも施されていて、それがまた本書を魅力的なものにしている。骨ばかりか肉までついたティラノサウルスの「完全な死骸」が発見され、その死骸を主人公らが解剖するという筋立てを活かし、最新の科学的知見に基づいた文字通りの「肉づけ」が巧妙になされているのだ。そのようにして再現されたTレックスは驚くほどリアルに見える。

「幼少時の記憶は3~4歳くらいまで遡れるが、そのときにはすでに恐竜が好きであった」と日本のある古生物学者が書いている。「家族から聞いた話では、祖母や両親がいろいろな図鑑を買い与えたなかで、なぜか恐竜の図鑑が気に入ってしまったのだそうだ」

 私の家にも恐竜図鑑はあったが、熱中したのは怪獣図鑑だった。想像力に乏しかった子どもには、怪獣のほうがリアルに思えたのかもしれない。なかに人間が入っていることがわかっていても、テレビのなかの怪獣は実際に動いていたし、色もついていた。おまけに個性まで備わっていた。それに対して、恐竜でリアルに感じられるものは、骨しかなかった。恐竜がはるか昔に絶滅したことを知っていた私には、骨こそが恐竜のすべてだった。博物館で見た骨格標本はそれがレプリカであってもリアルに思えたが、肉のついた恐竜の絵は子どもだましの絵空事にすぎなかった。実際、半世紀ほど前の恐竜本の絵は、科学的根拠の不足を想像力で補ったものが多かったのではないかと思う。その後、映画『ジュラシックパーク』を境に、恐竜の再現技術は格段に向上したが、そのころはもう子どもではなかった(怪獣はとっくに飽きていた)。

 先に引用した文章は『フタバスズキリュウ もうひとつの物語』(ブックマン社)から。著者の佐藤たまきさんは、本書の監修者でもある。併せて一読をおすすめしたい。

(おがわ・こういち)●既訳書に『宇宙ミュージアムでの1日』『レゴでつくる世界の美しい鳥』『世界で一番美しい切り絵人体図鑑』など。

『ティラノサウルス
大日本絵画
『ティラノサウルス とびだす解剖学ガイド』
ドゥーガル・ディクソン・文/レイチェル・カルドウェル・絵/小川浩一・訳/佐藤たまき・監修
本体3,000円