日本児童図書出版協会

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こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ11
「ミッケ!」シリーズ 小学館

(月刊「こどもの本」2019年9月号より)
「ミッケ!」シリーズ

明るく楽しいだけじゃない、何度でも見たくなる深さが魅力!
「ミッケ!」シリーズ
ウォルター・ウィック 作/糸井重里 訳
1992年8月~刊行

 1992年に発売以来、ロングセラーを続けシリーズ累計860万部のベストセラーになった「ミッケ!」シリーズ。世代を超えてファンがいます。

「ミッケ!」は、精密にセットされたジオラマ写真の中からアイテムを探して楽しむ「探しもの絵本」です。「ミッケ!」の発売後、似たような「探しもの絵本」は、いくつも出ましたが、「ミッケ!」は、他の絵本とはひと味もふた味も違います。では、何が違うのでしょうか?

 ミッケには答えが載っていません。これは、作者のこだわりのひとつですが、「どうしても見つからなくて、気持ちが悪いから教えて!」と読者から編集部に電話が入ることが多々あります。この「気持ち悪い」という感じがまさに「ミッケ!」らしさです。作者のウォルターさんは、みんなで答えを考えてほしいと言います。「これかな?」「いやこれだよ!」と悩んでほしいのだそうです。そんなふうに、みんなでいっしょに楽しめるのもロングセラーの理由でしょう。

 4月に6年ぶりに新刊が出ました。このシリーズは、アメリカの翻訳絵本としてスタートしましたが、今回は日本オリジナルでの出版です。実際に渡米して、打ち合わせを重ねて、2年半かけてやっと完成しました。

 ウォルターさんのアトリエには、アンティークのタロットカードや、のみの市で見つけた中世の置物など、これまで集めた不思議なものがたくさんあります。旅好きのウォルターさんは、旅先でのみの市やアンティークショップに行き素材を探しているのだそうです。

 新刊の絵本のテーマは「鏡と錯視」です。鏡が作り出す不思議な世界を、球体など、いろいろな形の鏡を使って表現し、そこに錯視トリックを加えて考えました。

 ウォルターさんは、錯視の世界が子どものころから好きだったそうです。まさに彼の真骨頂だったのです。

 出版時に翻訳者の糸井重里さんと、「ミッケ!」の人気の秘密について話し合う機会がありました。糸井さん曰く、「『ミッケ!』は、怖いものとクレイジーなものが隠れている。ただ明るく楽しいだけじゃないところが魅力だ」とのこと。そこが、子どもの本という狭い枠から抜け出て、大人までも惹きつけるのでしょう。「楽しいもの」「明るいもの」だけではない、「影」の部分までも、演出するウォルターさんのこだわりと、職人魂が、何度でも見たくなる魅力となっているのだと思います。見るたびに新しい発見のある絵本になっています。

(小学館 喜入今日子)