日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『くもとそらのえほん』 五十嵐美和子

(月刊「こどもの本」2019年8月号より)
五十嵐美和子さん

雲と空の世界への楽しい入りぐち

 今日の空は、どんな雲が広がっているでしょう。雨上がりに虹を見るためには、どうしたらよいのでしょう。朝日が昇ると、雲はどんな色に変わっていくでしょう。

『くもとそらのえほん』には、おばけのような入道雲、ふわふわのわた雲、もこもこのひつじ雲や、月のまわりを囲む光環など、様々な雲や空の光が登場します。雲と一緒に鳥になったような目線で地上を眺めると、模型のような街や動物園、遊園地や田んぼ、小さな車や、小さな人も見えてきます。巻末には、雲と空の光のリストや、雲がどのようにしてできるのかについても描きました。どの雲も、とても小さな水の粒がふわふわ浮かび上がってできているのですから、いつも見慣れているようで、実は不思議なことが空では起こっているようです。

 本作では、雲や空の光をやさしい言葉で紹介しています。例えば、巻積雲は「うろこぐも」、層雲は「きりぐも」というふうに、こどもたちが呼びやすく、イメージもしやすい方の名前を使い、それぞれの特徴について描いています。絵本に出てくる雲や空の光は、毎日のように空を取材して描きました。わた雲は浮かんでいるだろうか、今日は彩雲が見られるだろうかと観察する度に、空は美しい姿を見せてくれました。一方で、雲のなかには、雷を起こし、強い雨を降らせるものもあります。雲と空について知ることは、私たちを取り巻く環境の中で、生きていくためのヒントにもなるのではないかなと思っています。

 この度は、大変光栄なことに、気象予報士で空の写真家、南極観測越冬隊員のご経験をお持ちの、空の探検家、武田康男先生に、絵本のご監修をしていただきました。取材でも大変お世話になり、とても感謝しております。

 雲と空は、どのようなところに住んでいても親しめる、身近な自然なのではないかなと思います。雲と空の世界への楽しい入りぐちとして、少しでも貢献できましたら幸いです。

(いがらし・みわこ)●既刊に『はたらくくるまのずかん』『でんしゃのずかん』『コモちゃんのかくれんぼ』など。

『くもとそらのえほん』"
PHP研究所
『くもとそらのえほん』
五十嵐美和子・作・絵/武田康男・監修
本体1,300円