日本児童図書出版協会

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こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ7
『「54字の物語」シリーズ』 PHP研究所

(月刊「こどもの本」2019年1月号より)
『「54字の物語」シリーズ』

アナログとデジタルの相乗効果でブームに
『「54字の物語」シリーズ』
氏田雄介 著
2018年2月~刊行

『54字の物語』は、2018年2月に発刊し、10月末時点で13刷7万5千部を突破、11月には第2巻『54字の物語 怪(かい)』が発売、累計10万部突破が目前に迫ったシリーズです。

 親子に渡って読み継がれるロングセラーが多い児童書界では、まだまだ生まれたての赤子のようなシリーズですが、なかなかどうして元気の良い赤子です。

 生みの親である氏田先生にお会いしたのは、2017年6月のこと。当時、氏田先生は初のご著書『あたりまえポエム 君の前で息を止めると呼吸ができなくなってしまうよ』(講談社刊)を発刊されたばかりでした。

 面白いことを考える人だなぁと感心し、氏田先生のインスタグラムやツイッターを拝見していたところ、「インスタ小説」なる54字の物語の原型が4~5作投稿されているのを発見。その中にあったのが、1巻の表紙にも掲載している「先日研究室に送ってくれた大きなエビ、おいしかったよ。話は変わるが、例の新種生命体のサンプルはいつ届くのかね?」というお話でした。

 たった54文字なのに、ちゃんと物語になっている。9マス×6行という正方形の原稿用紙も、インパクトがあって良い。解説があれば、小学校中学年くらいから理解できる。

 ここ数年、朝読の時間にも読みやすい短編小説の売行きが良いこともあり、「世界一短い(かもしれない)短編小説」という打ち出しで、発刊しました。

 初刷は5千部。決して多い初版ではありませんでしたが、「これは面白い」と感じてくれた営業担当者が繰り返し書店に案内をしてくれたおかげで、発刊1か月で重版が決定しました。

 その後、重版記念として「54字の文学賞」を実施。ツイッターと郵送で「オリジナルの54字の物語」の応募を受け付けました。告知は自社ホームページとツイッター、一部の書店店頭のみでしたが、下は7歳から上は70代まで、約3000作が集まりました。

 文学賞の結果発表は、WEBニュースやTV、ラジオなど数々のメディアで取り上げられたほか、10月27日の「読書の日」には、ツイッター社からの提案で「#54字の物語」とツイートするとハッシュフラッグ(特別な絵文字)が表示されるキャンペーンが実施されるなど、盛り上がりを見せています。

「アナログな文化(書籍)」と「デジタルな文化(SNS他)」が相乗効果を発揮したことが『54字の物語』ヒットのひみつだと考えています。今後の展開にもご期待ください!

(PHP研究所 小野くるみ)