日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『スミス先生と海のぼうけん』『スミス先生ときょうりゅうの国』 斉藤 規

(月刊「こどもの本」2012年4月号より)
斉藤 規さん

本のなかには未知の世界がいっぱい

 二〇一〇年は「国民読書年」でしたが、その頃から読書推進の運動はなお一層の課題を抱えることになったと思います。「学校図書館活用ハンドブック 学力向上のための読書活動」(文部科学省・静岡大学)で示されているように、学力の高さと読書時間の長さは必ずしも一致しない、読書時間の長い子でも、その学力は必ずしも高くはないというのです。これは読書に関するさまざまな質が問われはじめている証しといえます。

「スミス先生」シリーズでは『スミス先生と海のぼうけん』『スミス先生ときょうりゅうの国』が出版できました。これらの本は、フランスのジューヌ=ベルヌやイギリスのコナン=ドイルという古典ともいえる文学世界を舞台にして、話を広げています。前世紀の著名な文学者が子どもたちにより身近になると思います。 

 話のすすめかたやコンピュータを活用した絵はすばらしく、作者マイケル・ガーランドが豊かな才能の持ち主だということがわかります。子どもたちは、日常と異なった未知の世界へと導かれるに違いありません。それに加え期待したいのは、本の世界のなかにさまざまな疑問をみつけ、その答えを探し出して欲しいということです。例をあげるなら、『スミス先生と海のぼうけん』では、潜水艦はどれほどの速度で移動するのだろうか。実際の巨大イカの大きさはどれほどだろう。水族館に行って確かめたいなど。また、『スミス先生ときょうりゅうの国』では、恐竜と人間は同じ時代に生活していたのだろうか。恐竜はその後どうなったのだろう。自然科学博物館で当時の植物などを知りたいなど。

「スミス先生」シリーズは全四冊です。他に『スミス先生とふしぎな本』『スミス先生とおばけ図書館』があります。読み聞かせとともにエプロンシアターやペープサート、ブックトークにひろげることができます。スミス先生やザック、アンなどのキャラクターから、色彩や音、香りや触感など、たくさんのものが、この本から手に入るに違いありません。

(さいとう・ただし)●既訳書にM・ブラッドビー『ぼくが一番望むこと』、W・ミラー『ぼくの図書館カード』など。

「スミス先生ときょうりゅうの国」
新日本出版社
『スミス先生と海のぼうけん』
『スミス先生ときょうりゅうの国』
マイケル・ガーランド・作
斉藤 規・訳
本体各1,300円