こどもの本

私がつくった本80
汐文社 樋口 勝

(月刊「こどもの本」2017年12月号より)
日本の手仕事(全4巻)
日本の手仕事(全4巻)
遠藤ケイ/絵と文
2017年9月~刊行

 文とイラストは遠藤ケイさん。1980年から「ビッグコミックオリジナル」に『男の民俗学』を10年にわたって連載。市井の職人や芸人たちに密着取材をおこない、緻密かつ独特のイラストと文章で表現した作品で人気のシリーズとなっていました。現在もそのスタイルは変わらず、民俗学的な考察をベースに、人と自然の関わりや職人の技をテーマに、新聞や雑誌で独自のイラストと文章を発表されています。

 さて、そんな遠藤ケイさんとの出会いは、とある月刊誌に連載の「けいくまさんの日本の手仕事」を目にする機会を得たことでした。それからの経緯はさておき、はじめてお会いしたときのことをお話ししましょう。上越新幹線で新潟の燕三条駅に降り立ち、改札を抜けると、そこにはすでに遠目にもわかる頭にバンダナ姿で体格のよい、眼光鋭そうな「けいくま」さんが。恐る恐る近寄り挨拶をするのですが、あにはからんや、さっきまでの眼光の鋭さが嘘のように、あたかも小動物のような人見知りで、それでいてやさしい眼差しに変わるのです。氏の四駆で近くのファミレスに移動、いよいよ企画主旨などの説明から本題へ。連載作品の書籍化がメインとなるため、こちらのアイデアが中心とはなるのですが、氏はといえば、言葉少なく時々相槌を打つにとどまります。このままでは、こちらの一方的な展開に終わるとやや焦りながら、ある職人についての質問にかえてみることに。するとさっきまでの寡黙な「けいくまさん」とは違う、目に光を宿した「遠藤ケイ」が現れたのです。私の実家が工務店であることから、少なからず幼少より職人と触れ合う機会もあり、そんな話も交えながらの初回打ち合せとなりました。

 それから数か月後、具体的な進行にともない、再度出向くこととなるのですが、約束を取りつけたのが2月、今回は自宅への訪問。冬の燕三条、氏いわく「自宅は山の中腹、例年2メートル超の積雪になるけど、自宅前だけは雪かきをしておくよ」と電話の向こうで悪戯っぽく微笑むのが手に取るようにわかる。豪雪の新潟、さらに山の中腹、自宅の前だけは雪かき……。地図上でも家がありそうもないような地形。すっかり怖気づいた私は、それらしい理由をつけて訪問延期を願い出ることに。了承を得て、とりあえず遭難は回避、雪解けを待って改めて訪問することに。あの日の回避がいかに適切であったかを再確認しながら山道を登ります。氏が独力で建てた家はすこぶる素朴な佇まいで、夏などはとても快適そうです。「今度は泊まりでいらっしゃい、母屋の続きの小さな離れに泊まれるから」と温かい言葉。打ち合せを終えて、山を下りながら胸中思うのは、「なにはともあれ、冬はやめておこう」。