こどもの本

私がつくった本78
教育画劇 松田幸子

(月刊「こどもの本」2017年8月号より)
いちばんしあわせなおくりもの

いちばんしあわせなおくりもの
宮野聡子/作・絵
2016年4月刊行

 今、精力的に制作されている、絵本作家の宮野聡子さん。私もいくつかの絵本づくりをご一緒させていただきましたが、その中でもとっても好きな絵本が、この『いちばんしあわせなおくりもの』です。

 宮野さんの絵本の中には、いつも太陽の光や、優しさがこめられているように感じます。直感でしたが、「好き」というテーマで宮野さんが絵本を創ったらきっと素敵だろうな…と思いました。思い立ったらすぐ、メールして、打ち合わせへ。「好き」というテーマを宮野さんにお持ち帰りいただき、数ヶ月。

 でてきたのは…すばらしいラフ作品。いくつかの細かい変更相談を重ねた後、企画提案へ。企画書を書く時に、自分の判子を最後に押すのですが「絶対に企画、通りますように」という心をこめたのを覚えています。

 企画が通ってからは、原画入稿、そして、色の調整へ。明るいきれいな色を多用した原画の雰囲気を再現したい。なじみの絵本製版会社さん、十五年前に編集者になった時からお世話になっている印刷会社のご夫婦とベテラン刷り職人の息のあった方々に支えてもらいながら、責了できました。

 印刷立ち会いは、田町の海の近くの工場です。刷り職人の人々は朝が早く、なんと七時から出勤しているそうです。けれども、私は色が調ってきた九時頃から、確認を。二時間に一度、一折分の色確認をして、印刷はだいたい、二日くらいかかります。刷っている最中には、製本会社の方や紙屋さん、製版会社の方も気にして顔を出したりしてくれます。

 形になった絵本は、営業の男性たちが、感動してくれ、全員熱心に全国の書店さんに宣伝していただきました。重い鞄に絵本の見本をいれて、数週間単位で全国各地へ。

 幸いにもリブロ絵本大賞の大賞に選ばれ、また、毎日多くの世代の方々から読者カードの感想をいただきます。五〇代、六〇代の女性がとても多いことに最近気がつき、大人の方々にも喜んでいただけたことにとっても嬉しい気持ちになります。

 絵本は自分の周りの身近な人がいいなと感じ、お金を出して買ってもらえる、そんな作品を作りたいと思って企画することが多くあります。美術館の売店で本を買う時の気持ちよりも、日常の必需品を買う時の気持ちで、絵本を買ってほしいという気持ちがあります。

 この作品がいろんな人の心につながっていったのは、宮野さんはじめ、教育画劇の社員、印刷会社さん、紙屋さん、製版会社さん、製本会社さんのすばらしいチームワークあってこそと思います。新刊の絵本でなくなっても、ずっと、新しい読者をマイペースに増やしていく作品であってほしいなと願っています。