こどもの本

私がつくった本33
ほるぷ出版 中村宏平

(月刊「こどもの本」2012年3月号より)
ころころぽーん

『ころころぽーん』
新井洋行/作
2011年6月

 この絵本『ころころぽーん』は、リンゴをとろうとしたクマの子が、失敗して、ころころころがっていくお話です。そして、そのクマの子の動きすべてが、擬音語や擬態語などのオノマトペだけで表現されています。

 僕が、この絵本を描いた新井洋行さんと出会ったのは、二〇〇五年のこと。小社の翻訳読物「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズのイラストを描いていただいたのがきっかけでした。かわいくコミカルなのにスタイリッシュな雰囲気もあるイラストが、このシリーズのイメージにぴったりだと思い、お願いしました。

 それから、毎年一冊ずつ、全部で六冊のイラストを描いていただくなかで、新井さんと、いつか絵本を出せたらいいね、という話をしていました。そして、最後の六冊目の本のイラストを渡してもらったとき、見せてくれたのが、この『ころころぽーん』のラフでした。

 ラフを見たとき、なによりも、転がっていくクマの動きが楽しく、ページをめくっていくうちに自分も、飛んだり跳ねたりとクマの子と同じように動いているような気持ちにさせられ、ぜひ、絵本にして出したいと感じました。

 ラフを詰めていくなかで、イラストのちょっとした変化や、テキストの大きさや画面の中での位置が変わることで、ものすごく読んだ印象が変わるということを何度も感じました。

 たとえば、テキストがクマの子の前方にあると、読んだときに気持ちよさや爽快感がなくなってしまいます。クマの動きを体感してもらうのが、この絵本の肝なので、左から右へと動いていくクマの動きを塞ぐようなところにテキストがあると、動きが邪魔されているように感じてしまうのです。

 また、クマの子のサイズや位置が、前のページからのつながりを感じさせることのできないかたちで描かれていると、ほんのちょっとしたことであっても、不自然に感じてしまいます。

 絵本は、「ページをめくることで成り立つ表現方法」であり、「文字と絵が合わさった表現方法」であると思います。音と動きに重点を置いたシンプルな内容だからこそ、編集をしていて、この絵本ほど、それを感じさせてくれた本はありませんでした。

「子どもが、おもちゃを楽しむように、絵本を読んでほしい」という新井さんの思いのつまったこの絵本は、読み終わったときに、遊園地のアトラクションを体験し終わったかのような気持ちになる絵本になりました。

 夏刊行予定の第二弾『ぐるぐるざぶーん』もどうぞよろしくお願いします。