日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ライバル・オン・アイス1』 吉野万理子

(月刊「こどもの本」2016年12月号より)
吉野万理子さん

本が苦手な女の子ぜひ試し読みして

 小学生の読者から、ファンレターをよくもらいます。そのなかで特に、編集者さんといっしょに大喜びしたものがありました。それは、卓球の物語を読んでくれた子からのコメント。
『今まで一さつも本を読み終えたことがなかったけど、この本はなぜか全部読めた』
 高学年の男の子からでした。
 思わず、わぁ、と声を上げたのを覚えています。もしかしてこの子はそれ以来、読書が好きになった可能性、ありますよね。そのキッカケの一冊になれたのだとしたら、こんなにうれしいことはありません。
 この経験があってから、小学生向けの本は意識的に、『読書があまり好きではない子』に向けて書くようにしています。読みやすい文章で、先が気になってページをついめくりたくなるストーリーを紡ぎたい、と。
 読書をする男の子が少ないと聞いて、これまでは男子が読めるお話をいくつか書いてきましたが、たまには女子に向けた作品もいいかも……。
 そう考えて、今回お届けするのが『ライバル・オン・アイス』です。
 フィギュアスケートに興味を持つ主人公の美馬は、小学四年生の女の子。ある事情で、たった三か月だけスケート教室へ通えることに。類まれなジャンプ力を発揮し、チームメイトを驚かせます。しかし、そのせいで徐々に嫉妬の嵐が巻き起こります。
 イジワルになった友達、立ちはだかるライバル、スケートをやることに反対のお母さん、お金の問題。応援してくれる、中学生の怜央くんだけが心の支えです。
 トラブルが山積みで、三か月どころか一か月でやめざるを得ないことになり、さあどうなる―!?
「なぜか」全部読めちゃって、「なぜか」2巻も手に取りたくなっちゃって……。そんなシリーズにできるよう頑張ってます。
 さあ、「読書って、あんまり興味がないの」と思ってる小中学生の女子のみなさん、ぜひお試しくださいな。

(よしの・まりこ)●既刊に『チームふたり』『時速47メートルの疾走』『赤の他人だったら、どんなによかったか。』など。

ライバル・オン・アイス1
講談社
『ライバル・オン・アイス1』
吉野万理子・著
げみ・絵
本体1、200円