こどもの本

私がつくった本74
徳間書店 田代 翠

(月刊「こどもの本」2016年11月号より)
ややっ、ひらめいた! 奇想天外発明百科

ややっ、ひらめいた! 奇想天外発明百科
マウゴジャタ・ミチェルスカ/文、アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ/絵、阿部優子/訳
2016年2月刊行

『ややっ、ひらめいた! 奇想天外発明百科』は、大昔から現代までの、世界じゅうの、思わず笑ってしまうような風変わりな発明を紹介した本です。
 文章を、ワルシャワ美術館出版部に勤める著者がまとめ、イラストを、世界三百万部の大人気絵本『マップス 新・世界図絵』の作者でもあるアレクサンドラ&ダニエル・ミジェリンスキが担当しています。
 この本に出会ったのは、ブックフェアのミーティング。『マップス』の原出版社である、ポーランドのDWIE SIOSTRY社の版権担当者が、ミジェリンスキ夫妻の携わる本として、完成前に見せてくれました。
 紹介されているのは、たとえば、水の電気分解で発生する泡を使って通信をする、十九世紀のポーランドの発明。けれど、ケーブルの長さの範囲でしか使えないし、泡の発生に時間がかかるので、これなら叫んだほうが早いという代物。こんな具合に、どの発明もつっこみどころ満載なのですが、どんな発想から生まれたかを読むと、思いついた人は大真面目だったこともわかります。そのギャップがとにかくおもしろい! また、『マップス』で、人物の絵が個性的と評判だったミジェリンスキ夫妻。本書では、一つの発明ごとに、説明図だけでなく、「これが使われたとしたら……」というゆかいな想像図も描いていて、ミジェリンスキ・ワールド全開!
 編集作業を始めると、ひとつ、壁にぶつかりました。日本語訳を作る際、言葉を日本語に置き換えるだけでなく、訳者も編集者も、発明品のしくみなど、内容をきちんと正確に把握しないと、意味が伝わる訳は完成しません。ところが、理科に関わる知識は、訳者の阿部さんも私もかなりさびつきが……。専門家にたずねたり、大学図書館で資料を集めたりして確認を重ねました。
 ところで、ミジェリンスキ夫妻は、タイポグラフィなど、文字へのこだわりが強い画家です。日本語の文字の書き方もひととおり勉強したそうで、『マップス』に続き今回も、日本語を「ぜひ書きたい」と申し出があり、タイトルを書いてもらうことに。彼らは文字のセンスが抜群で、字形もこなれているし、「ツ」と「シ」など、区別しにくい文字の書き分けも完璧なのです。今回も、部首のバランスを一、二箇所調整した程度で、難なく完成! のみならず、本文の組版にも厳しいチェックが……! 組版ルール上、「間違いではないけれど、正したほうが美しく見える」箇所を指摘してくれました。「最後まで手を抜かないで!」と監督してくれる人が海の向こうにもいるのは、ありがたいことです。
『マップス』以来、DWIE SIOSTRY社とはやりとりも増え、チームを組んでいるような気がしています。ポーランドと日本で共同制作(!?)した本書。多くの読者に楽しんでほしいと思います。