こどもの本

私の新刊
『動物園大脱走―機械のしくみがわかる本』 小寺敦子

(月刊「こどもの本」2016年10月号より)
小寺敦子さん

物理を楽しく学びたければ

 物理、と聞いて何を思いますか。記号まじりの数式や様々な法則? 数学以上にとっつきにくい学問? 文系人間の訳者がこの翻訳の依頼をいただき青くなって思いうかべたのはそんなこと。
 実際、このしかけ絵本は、機械を動かす動力の基本的な6つの原理―てこ、くさび、斜面、輪軸、ねじ、滑車のしくみを解き明かしたものなのです。難しそう? いいえ! 
 なぜなら、この絵本の作者は名著『道具と機械の本』のデビッド・マコーレイさん。物理の重い扉を、私のような理科ニガテの読者にも広く開けはなってくれた鬼才のイラストレーターです。科学的な事柄はきちんと説明しながら、奇想天外な発想で書かれたストーリーのおもしろさには定評があります。
『動物園大脱走―機械のしくみがわかる本』も期待を裏切りません。動物園のナマケモノ、モノくんとハネジネズミのハネジくん、仲良し2ひきが囲いから逃げだすアイディアを次々と思いつき、そのための道具を作るお話です。
 てこを応用したシーソー板で囲いから飛びだそうとしたり、歯車を組みあわせた穴掘り機でトンネルを掘ったり、ねじの原理で飛ぶ乗り物を考えたり。
 でもハネジくんの計画は、モノくんのマイペースな協力もむなしくいつも失敗。どうしたらうまくいくのか? 2ひきの悩みは、いつしか訳者の悩みに。翻訳そっちのけで、本についてくるシーソー板を使い、2ひきの紙人形を飛ばしては考えました。
 そんなハネジくんが最後に思いつくのは、使った道具すべてを組みあわせた究極の機械。(この本では立体で見られます!)すごい! ハネジくん。これなら、脱走の成功まちがいなし?
 失敗にめげず、考え続けるハネジくんの姿は、動力を機械へとカスタマイズしてきた人間の挑戦そのもの。このしかけ絵本では、ハネジくんとともに考え、失敗を繰り返しながら、機械のしくみを学べます。どうぞ手を動かして、お楽しみください。

(こでら・あつこ)●既訳書にジャネット・タージン/著『ぼくが本を読まない理由(わけ)』。

動物園大脱走―機械のしくみがわかる本
大日本絵画
『動物園大脱走―機械のしくみがわかる本』
デビッド・マコーレイ・作
小寺敦子・訳
本体3、000円