日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『コトリちゃん』 とりごえまり

(月刊「こどもの本」2016年7月号より)
とりごえまりさん

photo by yukoOkoso

めぐみさんからの贈り物

『コトリちゃん』は、絵を描いてくれた、故・やまぐちめぐみさんと出会ったことで生まれたお話。めぐみさんの絵だったらこういうふうに描かれるのかなあ…と想像しながらわくわくして書いたお話です。私が絵本作家になってから二十年ほど、お話だけを担当し、別の絵描きさんに絵をお願いした作品はこれが初めてです。
 めぐみさんと出会ったのは二〇一二年のこと。めぐみさんはすでに難病と闘っていました。自由に歩くこともままならぬ状態で、でも毎日精力的に絵を描き、きちんと生活をしているめぐみさんは、とても素敵な女性でした。めぐみさんの絵が大好きになった私は、「この人と絵本をつくりたい!」と思い、めぐみさんに絵を描いてもらうためにお話を書くことにしました。それが、一年に一度だけ目を覚ます小さな女の子、コトリちゃんのお話です。
 コトリちゃんは、たった一日しかない時間を、自分のためではなく、悲しんでいる人や寂しい思いをしている人のために使います。コトリちゃんは、めぐみさんに似ているのかもしれません。めぐみさんも、まわりの人たちを喜ばせることをいつも考えている、そんな人でしたから。
 ゆっくりと制作を進め、ふたりで絵本ができあがるのをとても楽しみにしていたのですが、残念ながらめぐみさんは、絵を描き終える少し前、昨年の九月に天国へと旅立ってしまいました。
 幸い私は絵描きでもあるわけなので、制作途中だった二枚の絵は加筆し、足りなかった最終ページは描きおろすことにしました。全体の展開も改めて見直し、この絵本で伝えたかったメッセージがちゃんと届くよう、文章を少し変えました。でも、その展開だと絵がどうしても足りません。試行錯誤した結果、めぐみさんが過去に描いた作品の中から二枚の絵の一部を使い、『コトリちゃん』はできあがったのです。
 子どもから大人まで、いろいろな方にご覧いただきたい一冊になりました。みなさんの心に、めぐみさんからの温かい贈り物が届きますように。

(とりごえ・まり)
●既刊に『ぼくのへやのりすくん』『ロバのポコとうさぎのポーリー』『みにくいあひるのこ』など。
『コトリちゃん』

佼成出版社
『コトリちゃん』
とりごえまり・さく
やまぐちめぐみ・え
本体1、300円