日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『少年弁護士セオの事件簿』 石崎洋司

(月刊「こどもの本」2012年2月号より)
石崎洋司さん

グリシャム初! 児童向け法廷ミステリー

 法廷ミステリーの第一人者にして、屈指のベストセラー作家のグリシャムが、なんと児童書を書きました!

「でも、難解な法律用語の飛び交う裁判のシーンもあるのでしょう? 大人向けならともかく、児童には難しいのでは?」そう疑問を持たれるかもしれません。が、絶対に読者を飽きさせない「ストーリーテリングの技術」で世界中にファンを持つ作家の手にかかれば、むしろ、わかりやすくて、面白い、「世界初の児童向け法廷ミステリー」になってしまうんです。私自身、訳しながら、文学性や社会性を振りかざすあまり、読者を置き去りにしがちな日本の児童文学とはだいぶちがうなぁと、ほんとうに感心しました。いや、このわかりやすさ、子どもたちだけに読ませるにはもったいない(笑)!

「司法の世界のこと、実はよくわかってない」という本音を抱く大人たち、そして、保護者の方々や、学校の先生などにも、手にしてもらいたいのです。

 日本でも裁判員制度が始まってもう三年。みなさんも、子どもたちも、人を裁く立場になる可能性は大いにあります。それなのに、日本ではいまだに裁判所は雲の上のような存在です。私たちは「無罪の推定」という人権上大切な原則すらよくわかっていないし、「状況証拠」と「直接証拠」との違いの説明すらできませんよね。「司法取引」、「検察上訴の禁止」がなぜアメリカにあって日本にないのか、考えたこともないのではありませんか?

 そんなとき、この圧倒的にわかりやすくて楽しい物語が役にたちます。十三歳の主人公セオに導かれて、ハラハラどきどきするうち、司法とは何か、法律と裁判の意味と役目とは何なのかを、理解していることでしょう。そして、「もっと知りたい」と、興味をかきたてられているはずです。

 日本とアメリカの司法制度や国情の違いも、解説に加えました。親子や教室で、法律や裁判、日々の事件、そしてその報道のあり方そのものにも興味を広げ、語り合っていただくきっかけに、きっとなるはずです!

(いしざき・ひろし)●既刊に「マジカル少女レイナ」シリーズ、訳書にM・ワイルド『さよならをいえるまで』など多数。

「少年弁護士セオの事件簿」
岩崎書店
「少年弁護士セオの事件簿」①なぞの目撃者 ②誘拐ゲーム
ジョン・グリシャム・作
石崎洋司・訳
本体各1,400円