こどもの本

私の新刊
『わたしの森林研究 鳥のタネまきに注目して』 直江将司

(月刊「こどもの本」2016年1月号より)
直江将司さん

トリやケモノが育む豊かな森

 植物は、なぜおいしい果実を作るのだろう? 私たちが普段食べている果実にタネが無かったり、格別に甘かったりするのは品種改良や生産者の努力によるところが大きい。しかし、本来果実は人間に食べられるためではなく、トリやケモノに食べられるために存在している。植物は果実を差し出す代わりに、動物にタネを離れた場所にフンとして運んでもらっているのだ。動物を利用してタネが一か所に集中することを防ぎ、タネを食べにやって来る昆虫や病原菌などから逃れているのである。動物にタネまきを依頼する植物は全体の3分の1にもなる。
 本書の目的は、茨城県の落葉広葉樹林「小川の森」での成果も交えて、読者の皆さんに動物が豊かな森をいかに守っているか、また森の研究の楽しさをお伝えすることにある。一見したところ森はデンと構えて、さして動きが無いように思える。しかし、実際は少しずつ変化しており、今の状態が将来にわたって維持されるとは限らない。その理由の一つがタネまきである。
 動物のタネまきの量や仕方が変わることで、森も変化するのだ。例えば、私の研究では伐採で細長くなった森ではトリの数が少なくなり、タネがまかれる量も減っていることが分かった。その結果、野生の桜などは減っていくと予想された。また、カラスは森を自由に出入りしていて、森の外にタネを運ぶことで森の拡大に役立っていることも分かった。一方で彼らは大型の果実を好むので、彼らによって作られる森は大型の果実ばかりになるかもしれない。
 森は放っておいても変わらないと考える人は多いと思うが、そう単純ではなく、そこに生息するトリやケモノのおかげで維持されているのだ。彼らはそんな大仕事をしているとはつゆ知らず、ただ生き生きと生活している。彼らの仕事ぶりを試行錯誤しながら明らかにしていくのは大変ワクワクする作業で、そういった研究の楽しさを少しでも感じ取っていただけると嬉しく思う。

(なおえ・しょうじ)
●本書が初の著作。

『わたしの森林研究 鳥のタネまきに注目して』
さ・え・ら書房
『わたしの森林研究 鳥のタネまきに注目して』
直江庄司・著
本体1、400円