日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おべんとう だれとたべる?』 あずみ虫

(月刊「こどもの本」2015年6月号より)
あずみ虫さん

おいしくて幸せな贈り物

『おべんとう だれとたべる?』は、タイトルの通り、お弁当の絵本です。くまさん、おばあちゃん、ねずみさん、あっちゃんとたっくん……それぞれが、自分用ともうひとつ、誰かのために作った料理をお弁当箱に詰めて出かけます。誰と、どこで、食べるのかな?というお話です。

 見どころのひとつは、作った料理が次のページで、お弁当箱にぎゅぎゅっと詰まっているところです。この絵本の絵は、アルミ板をハサミで切ってから絵の具を塗るという技法で作っていて、アルミ板で作ったサンドイッチやおにぎりを、アルミ板で作ったお弁当箱に、実際に詰めて(置いて)撮影しました。それは、おままごとをしているような、とても楽しい作業でした。

 アルミ板を切って絵の具を塗るという技法をすすめてくれたのは、恩師であるイラストレーターの安西水丸さんでした。私のペンネームの〝あずみ虫〟も、「君、虫に似ているね」と安西先生がつけてくれた名前でした。その安西先生が昨年急逝され、暗い気持ちでいたとき、編集者の方が絵本の企画案を持ってきてくれました。その会話のなかで編集者さんが「最後は桜の下でみんなでお弁当を食べたらどう?」と提案してくれました。それは偶然にも、安西先生が絵を描かれた、私の大好きな絵本『ピッキーとポッキー』のラストシーンと同じでした。

 この企画は、当時の私にとって何より嬉しい贈り物でした。ですので、この絵本は『ピッキーとポッキー』へのオマージュの気持ちもこめて描きました。『ピッキーとポッキー』のすみれサンドイッチの代わりに、すみれおにぎりを描いたり、ピッキーとポッキーのような二羽のうさぎさんがいたり。

 制作過程では、担当編集者さんを含む色々な方と「ねずみさんはどんなお弁当が好きか?」「四季を感じる絵本にしたいね」「旬の食べ物はどれがいいか?」「冬は寒いから室内で食べよう」など、一生懸命に考えました。『おべんとう だれとたべる?』は私だけで作った絵本ではなく、みんなで作った、おいしくて幸せな絵本です。そんな楽しい気持ちが伝わったら嬉しいです。

(あずみむし)●既刊に『ぴたっ!』『いもむしってね…』(澤口たまみ/文)など。

『おべんとう だれとたべる?』
福音館書店
『おべんとう だれとたべる?』
あずみ虫・さく・え
本体1,200円