日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本64
評論社 岡本稚歩美

(月刊「こどもの本」2015年6月号より)
魔法ねこベルベット(全6巻)

魔法ねこベルベット(全6巻)
タビサ・ブラック/作、武富博子/訳、くおんれいの/絵
2014年5月~2015年3月刊行

 社内で初めて原作を検討したとき「これはどんどん続きが読みたくなるシリーズだ♪ スピード感をもって刊行しよう」ということで意見が一致しました。なにしろ、魔法のお話で、しかも魔法を使うのは「人間」ではなく、「子ねこ」なのですから! 

 舞台はイギリスの古いお屋敷。今は少女のための寄宿学校になっています。そこに転校してきたペイジは、陽気なシャノン、優しいサマーと親友になります。三人の部屋に転がりこんできたのが真っ黒な小さな子ねこ。ベルベット地のリボンを首につけていたので「ベルベット」と呼ばれることになります。

 少女たちは、毎日の楽しい学校生活の中、この子ねこのひげがピカピカ光ると、必ず不思議なことが起こることに気づきはじめます。そして、学校に伝わる大切な宝物がねらわれたり、演劇祭がめちゃくちゃになりそうだったり、友だちに脅迫状が届いたりする事件を、子ねこといっしょに解決していくのです。

 このシリーズでいちばん好感が持てたのは、なんでもさっと魔法で解決するのではなく、子どもたちが自分で考え、悩み、勇気を出して物事にあたっていく姿でした。友人の不正を見つけても、すぐ大人に言いつけるのではなく、どうにかやめさせようとする、困っている子がいれば力になろうとする、まちがったことをしている人には、たとえそれが先生でも必死で意見を言う……そんな少女たちを、子ねこの魔法がさりげなくサポートします。最後にはきっとみんなが幸せになれる、善意に満ちた物語です。

 シリーズを刊行するにあたって、翻訳をお願いする武富博子さん、デザインを担当していただく中嶋香織さん、イラストを描いてくださるくおんれいのさん、それに編集者の四人で「チーム・ベルベット」の結成式(!?)を行いました。武富さんには前もって六巻分のあらすじを作成していただき、くおんさんには主人公たちのスケッチを描いてきていただき、中嶋さんには装丁のイメージをお話しいただき……駄菓子を食べながら、日曜日の会議室で、あれこれとアイデアを出しあったことが、なつかしく思い出されます。その後の校正紙のやりとりでは、黒ねこのメモ用紙やマスキングテープなど、ねこグッズがいきかうこととなりました。黒ねこの文房具を見ると、みんなつい買ってしまうようでした(笑)。(写真に写っている黒ねこの文鎮もそのひとつです。)

 本が一冊できるというのは、まさに「チーム」の一人一人が力を出しあうことなんだなーと、長年編集をやってきて当たり前なことを改めて感じた仕事でした。一年でシリーズ完結というきついスケジュールをきっちりこなしてくださったチーム員に感謝です。「私がつくった本」ではなく「私たちがつくったシリーズ」としてご紹介したい気持ちです!