日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本59
ポプラ社 松沢清美

(月刊「こどもの本」2014年12月号より)
ぱっぴぷっぺぽん

ぱっぴぷっぺぽん
もろかおり/え、うしろよしあき/ぶん
2014年8月刊行

 あれは、もうすぐお昼休みに入る、という時間だったと思います。電話を取ると、うしろよしあきさんでした。なんだか妙にうれしそうな声です。

「とっても楽しい絵本になりそうなんだけれど、見たくない?」

 見ます、見ます! 見ないわけがありません。

 いつもの喫茶店で、この絵本のダミーを拝見しました。たしかに、とっても楽しい絵本になりそうな予感です。なにしろ「ぱっぴぷっぺぽん!」と口にするだけでもうれしい気分になってしまいます。子どもたちが一緒になって「ぱっぴぷっぺぽん!」と大喜びしている姿が目に浮かびました。

 ぜひぜひ、完成させましょう。

 こうして、私とこの絵本は出会ったわけですが、このときすでに、ダミーが十冊、つまり、十回描き直しをしていたそうです。私がかかわってからも、二冊ダミーをつくりましたから、完成までに、なんと十二回も描き直し、手直しをしたことになります。

 絵のもろかおりさんは、元保育者です。この絵本のために、一年間、臨時職員として保育園で働きました。子どもたちを肌で感じながらつくりたかったからです。

 子どもたちに、読み聞かせをするたびに、少しずつ、構成や文章が変わっていったのでした。

 たとえば、タイトルにもなった「ぱっぴぷっぺぽん」ですが、はじめは「ぱっぺらぽっぽっぽー」だったそうです。リズムもおもしろいし、うしろさんももろさんもずいぶんと気に入っていました。子どもたちもきっと! と読み聞かせに臨みました。

 ところが……。

 二歳の子どもたちは、「ぱっぺらぽっぽっぽー」を、うまく言えないのです。そのせいか、あんまり乗ってきませんでした。これでは、一緒に読んで楽しむことはできません。もっと子どもたちが言いやすいことばにしなくちゃ、思い切ってうんとシンプルにしてみてはどうかと、たどり着いたのが「ぱっぴぷっぺぽん」でした。

 また、子どもたちに読み聞かせをすると、子どもたちの集中が途切れる場面がわかります。子どもたちが「?」と感じているなという場面もわかります。その反応を受けて、場面の構成や展開も、どんどん変えていきました。

「この絵本は、子どもにずいぶん教えてもらったなあと思っているんですよ」とうしろさん。もろさんも、「子どもたちが先生でした。だから、この絵本、ぜったい子どもに受けるって自信、あります!」とおっしゃっています。

 日本中の子どもたちといっしょに、あっちこっちで「ぱっぴぷっぺぽん!」と、この絵本がはじけてくれますように。