日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本56
小峰書店 渡部のり子

(月刊「こどもの本」2014年7月号より)
すいか!

すいか!
石津ちひろ/文、村上康成/絵
2013年5月刊行

「まずは、すいか畑に行ってみませんか?」

 石津ちひろさんと村上康成さんに、あま~いお誘いをしたのが、二〇一二年五月のこと。六月には、東京近郊のすいかの名産地、千葉県富里市のすいか農家の篠原さんのお宅に三人で取材に行きました。石津さんと村上さんは、初めてのすいか畑。大人三人の社会科見学といった感じでした。

 すいか畑のビニールのトンネルの中には、生まれたての小さなすいかから、食べごろのすいかまで、ゴロゴロとなっていました。

「食べごろのすいかは音でわかります。ほら、いい音でしょ」と篠原さん。

 ポンポン、食べごろのすいかはいい音がします。熟れ過ぎはボンボンとちょっとにぶい音、まだのすいかは、カンカンと高い音。なるほど、たたいた音で食べごろがわかりました。

 すいかの黒い縞の数、黒い種と白い種ができるわけなど、すいかのトリビアもいろいろ教えていただきました。

 村上さんは「取材をして絵本をかくのは初めて。体験の中から絵本ができることはあったけどね」とボソリ。でも、取材の成果は絵本にバッチリいきています。

 意外なのですが、石津さんと村上さんが一緒に絵本を作るのは今回が初めてだったのです。でも、すいか好きという点では負けず劣らずのお二人。取材のときが初顔合わせとは思えないほど、すいか談義に花が咲きました。

 行儀が悪くてもかまわない。すいかにかぶりつき、思いっきり種をとばして、楽しく食べる。「思わずすいかが食べたくなるような絵本、これぞすいか!という本を作りましょう!」村上さんと石津さんの力強い言葉のもとに制作は進みました。

 じつは私の実家は山形のすいか農家。小さいころから、夏にはすいかの収穫から出荷まで手伝っていました。夏バテでご飯が食べられないときは、すいかがご飯代わりだったことも。今も、夏には実家からすいかを送ってもらうのを心待ちにしています。夏といえば、何といってもすいか! すいか好きの三人が、最後の一句まで、こだわりました。

 石津さんお得意の言葉遊びは、文頭に「すいか」の文字を折りこむ、折り句という手法。リズミカルで、「すいか」という言葉が耳に残るようになっています。

 真っ赤なすいかを、ほんとうに食べているように思える絵本ができました。 

 今年ももうすぐ、すいかの季節です。絵本を開いて、大きな口を開ける子どもたちが、たくさんいますように!

 すばらしい いっさつに かんしゃ!