日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おふとんのくに』 D[diː]

(月刊「こどもの本」2014年5月号より)
D[diː]さん

寝るのは楽しい!

『おふとんのくに』…大人のなかでもナマケモノの部類の私は、このタイトルをみただけでアクビが出て自宅のベッドに一目散にスライディングで飛び込みたくなるのですが、この本を描きたい! と思ったきっかけは、数年前、家族で熱海旅行にいった先の旅館で、深夜に姪っ子たちが寝ない寝ない…で、ABCやきらきらぼしを歌いながら襖をがんがん蹴とばしており、昼間の観光で疲れ果てクタクタだった大人たちが途方に暮れ始めていたときでした。

「もう、寝ようよぅ」と言っても「やだ! 寝るのなんてつまんないもん!」と言ってきかないのです。怒れば泣き出し、手の施しようがない阿鼻叫喚の一夜に…。小さい頃から、この絵本の主人公のように、おふとんは異世界への扉に違いないと妄想し、ひとりで布団にもぐりこんで遊んでいた自分としては、「なんとかして、寝るのは楽しいってことを、叱るのではなく、楽しい〝何か〟で伝えられないか」と、切実に思ったのです。

 そして出来上がったこの本、読んでくれた読者さんや友人たちは、子供たちにはよく、寝る前にこの絵本をもってきて読み聞かせしてとか、〝おふとんとんねる〟つくってとせがまれる。→そして、子供たちは本当に、途中でねむくなって寝てしまう…と、子供の寝かしつけに手こずっている親御さんたちのバイブル化を願っている私としては、とても嬉しい感想と反応をいただけた。親子のよみきかせイベントも二度ほどやらせていただき、この絵本を読んで以来、自分の枕を大事にしているとか、今夜また読んでもらう! という感想も直にいただけて、日頃あんなにたくさんの小さな子供たちに接する機会のない自分としては、とても貴重な体験となった。

 ちなみに、最後のページの「わあ あさだ おはようさん!」というセリフまで読んでしまうと、そのとたん、子供の目がぱっちりと開いてしまい寝かしつけ作戦は大失敗に終わるとのこと…笑。ぜひ、読み聞かせをしていただく際は、最後のページは朝までとっておいてくださいまし!

(でぃー)●既刊に『キぐるみ』『どうぶつのこゝろ図鑑』、挿絵に『キリンとアイスクリーム』(牧野夏子/文)など。

「おふとんのくに」
金の星社
『おふとんのくに』
D[diː]・作・絵
本体1,300円