日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本53
アリス館 郷原莉緒

(月刊「こどもの本」2014年3月号より)
いない いない おかお/みて みて おてて

いない いない おかお
みて みて おてて
北川チハル/作、三原由宇/写真、La ZOO/デザイン
2013年5月刊行

「これまでにない、赤ちゃん絵本を作りたいです!」

 著者の北川チハルさんは、まるで少女のように瞳をキラキラさせて、そう仰いました。

 
 自作の歌や手遊びなどを取り入れた絵本ライブやお話会、子育て支援活動などに取り組まれている北川さんは、活動での赤ちゃんたちとの出会いや、ご自身の子育ての経験から、「赤ちゃんたちは、自分以外の赤ちゃんたちの顔もじーっと見る」ということに気づきました。

「愛くるしい赤ちゃんの顔は、ママや大人の心もくすぐります。赤ちゃんの顔写真を用いて、現代のママたちに支持される、キュートでポップな赤ちゃん絵本を作りたいです!」

 北川さんのそんなあつい気持ちから、『いない いない おかお』は誕生しました。

 帽子を深くかぶり、顔がよく見えていない状態の赤ちゃん。次をめくると、帽子がとれて隠れていたお顔がぱあっと登場します。お顔の登場時には、赤ちゃんの表情に合わせた楽しい擬態語を添えました。

 しかし、この擬態語がなかなかの曲者。たった一声で、赤ちゃんの注意を引き、かつ写真の表情にピッタリのことばを探すのは、とても大変でした。何度もラフを作りなおしては、身近な赤ちゃんたちに見てもらって反応を動画にとり、それを繰り返し見ては議論を重ねました。

 赤ちゃんは、人の顔はもちろん、丸いものも好きなので、余分なものを入れずに、まんまるのお顔を楽しめる作りにしようと、赤ちゃんたちに、真っ白なスタイをつけてもらい、読み手の視線が顔に集中するようにしました。

 もう一冊の『みて みて おてて』は、赤ちゃんの最初のおもちゃになると言われている「手」が主人公。

 赤ちゃんのぷくぷくとした可愛いおててが、目覚めてから、手の持ち主である赤ちゃんのおくちに辿り着くまで色々な経験をするストーリーです。

 赤ちゃんは、はじめ、自分の手が自分のものだとは思っていないそう。噛んだりしゃぶったり、目の前で振ったり、パチパチ叩いてみたり、おもちゃにして遊んでいるうちに、だんだん自分の手だと認識してゆくそうです。

 この絵本で、「手」に興味を持ち、たくさん手を動かし、いろいろなものを自分の手で掴んでゆく。そんなお手伝いができれば幸いです。

 
 二冊とも新米ママにも読み聞かせしやすいように、赤ちゃんに語りかけるような文章を心がけました。赤ちゃんと一緒におしゃべりするように、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。