日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ぼくのくつしたは どこ?』 木坂 涼

(月刊「こどもの本」2014年3月号より)
木坂涼さん

ボーダーレスの楽しさ

 翻訳の依頼が来て、赤の色が基調の表紙絵を見たとたん、「わ、オランダの色!」と思いました。これだけ世界がボーダーレスになっていても、その国らしい色調があるっていいですね。自国の特徴を生かしつつ、新しい絵本を作っていく。それが楽しめるのも翻訳絵本の大きな魅力です。

 もう一つ、「オランダの色!」とぱっと思ったのには、以前『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』(金の星社)というオランダの詩集絵本を、オランダ語の翻訳家である野坂悦子さんと共訳させてもらった経験があったことも影響したかもしれません。そのご縁で、今回は作家の名前をどう片仮名表記するかについて、野坂さんに助け舟を出してもらいました。この場を借りてお礼申し上げます。「野坂さ〜ん、ありがとう」。(ちなみに、この絵本は英語から訳しました。)

 さて、男の子がお風呂に入っている表紙絵をめくっていくと、その子がお風呂上がりのすっぽんぽん姿で登場します。「ねえねえ ぼくの しましまの パンツ どこにあるか しらない?」

 そこから順繰りに、身に着ける衣類を探していきます。タンクトップ、靴下、ズボン、セーター…と。読者は男の子のセリフに促されていっしょにページの中に探しものをする。そんな参加型の絵本でもあります。シンプルさの中にも、作者はちゃんと文章と「色」とをクロスさせて、さすが、絵本を隅々「絵の本」にしています。

 また、見開きページの中に登場する主人公以外の動物や人間たちの、自由さにも目を見張ります。いたずらや、ごっこ遊びなど、日常と非日常(物語)とが、のびのび描かれています。そこもまた、というか、それこそがまた、子どもの世界そのもので、日常も物語の世界もごっちゃにボーダーレス。楽しく共存しているんですね。

 日本デビューとなるマライケ・テン・カーテさんのこの本、小さなお子さんといっしょに、楽しんでもらえたらなと思います。

(きさか・りょう)●既刊の絵本に『スズムシくん』など、訳書にC・ホートン『ちょっとだけまいご』など。

「ぼくのくつしたは どこ?」
ほるぷ出版
『ぼくのくつしたは どこ?』
マライケ・テン・カーテ・さく
木坂 涼・やく
本体1,000円