日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本49
金の星社 池田真純

(月刊「こどもの本」2013年10月号より)
超ふしぎ体験!立体トリックアート工作キットブック

『超ふしぎ体験!立体トリックアート工作キットブック』(既刊2冊)
杉原厚吉/著
2012年7月〜

 右上の写真をご覧ください。四つの方向にのびたすべり台があります。すべり台はふつう、上から下にすべりおりていくものですよね? ところが、このすべり台、降り口にビー玉をのせてみると……あらふしぎ! ビー玉が中央へ向かってのぼっていくではありませんか! 

 まるで手品の様ですが、タネもしかけもありません。人間の脳の「錯覚」を利用しているのです。

 すべり台を別の角度から見てみると、同じ長さ、同じ角度に見えた四つのすべり台が、じつは柱がかなり傾いていて、長さもまちまちであることがわかります。すべり台は中央に向かってくだっているのですが、ある角度から見ると、中央が盛り上がって見えるので、ビー玉がのぼるというふしぎな現象が見られるのです。

「超ふしぎ体験! 立体トリックアート工作キットブック」シリーズでは、このようなふしぎな立体を四つずつ、つくることができます。ミシン目やのりしろのある工作キットつきなので、ハサミとのりを使って、簡単に組み立てられます。

 著者は杉原厚吉先生。明治大学の教授で、人間の「錯視」という現象を研究されています。だまし絵のような視覚トリックを、数学を使って解明し、新たな錯覚作品も生みだしています。杉原先生がご出演されたNHKの番組を拝見し、そのふしぎな錯覚ワールドのとりこになり、今回の企画を依頼しました。

 工作の本を担当するのは、今回が初めて。小学校の算数で、立体の展開図の問題があったのを覚えているでしょうか。私はあれがとても苦手でした。そして、この本をつくるにあたり、やっぱり苦手だったのだと再認識させられました。頭でイメージできないのであれば、方法はひとつ。実際に組み立てるしかありません。来る日も来る日も、工作に明けくれ、何個つくったかわかりません。周囲の人たちには、楽しそうに見えていたようですが、手先が不器用なため、こちらは楽しむ余裕などなく真剣そのものです。机の上は、紙くずやのりまみれで、異様な空間になっていました。

 展開図を決めたあと、印刷会社から現場のエキスパートの方を招きました。紙について相談したり、ミシン目や折りスジのつけ方などについて教えていただいたりしました。

 初めてのことだらけで色々と苦労はありましたが、数学が苦手、工作も苦手な私でもできる本に仕上がりました。だから、きっと子どもたちにもわかりやすく、つくりやすい本になったはずです。もちろん、子どもだけでなく、大人も夢中になれる本です。ぜひ、実際につくって、「超ふしぎ体験」を味わっていただければと思います。
 
超ふしぎ体験!立体トリックアート工作キットブック