日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本47
集英社 宇田川晶子

(月刊「こどもの本」2013年8月号より)
くりちゃんのふしぎながっき

『くりちゃんのふしぎながっき』
はぎいわむつみ/作・絵
2013年6月刊

 内気で優しいうさぎの男の子くりちゃんと、元気でやんちゃなうさぎの女の子みかりんとの、心温まる友情物語です。仲間の輪にうまく入れないでいる二人は、話しているうちに、お互いの良い所に気づきます。ひとりもいいけど、お友達といっしょの方が、もっと楽しいよ、というメッセージが、さりげなく込められています。もう一つの特徴として、普通におはなし絵本として読むだけでなく、本全体が、さがし絵クイズにもなっているおまけつきです。

 作者のはぎいわむつみさんは、一九七八年に『りぼん』でデビューして以来、少女漫画雑誌の看板作家として活躍しています。その一方で、「絵本を描きたい」とずっと思い続けていました。忙しい合間をぬって、地元・北九州市の紙芝居コンクールに作品を応募。それが見事、最優秀賞を受賞し、紙芝居として、当地の図書館に置かれています。

 その受賞作品を元に、絵本版として描き直して生まれたのが、『くりちゃんのふしぎながっき』です。

 ところで私は、今は中学生の息子が小学生の頃、学習漫画の編集をしていました。当時、学校から「好きな本を持参可。ただし、漫画はダメ」というプリントをもらうたびに、肩身の狭い思いをしていました。そして、「子ども向けの本を作る以上、学校で禁止されない本を作りたい」と思うようになりました。

 その後、絵本編集部に異動。それまで担当していた漫画家の先生方に、「これからは、絵本を作ります」と挨拶状を出しました。すると、驚いたことに、「絵本を描いてみたいと思っています」と、お返事をくださった方が、何人もいらっしゃったのです。

 その時、ひらめきました。

「いけるかもしれない! やるなら、今でしょ!」

 はぎいわさんの夢と、私の願いがぴったり重なった瞬間です。

 未就学のお子様から大人まで、皆様が、「楽しい。また読みたい」と思ってくださるように、それだけを考えて作りました。かわいい絵柄に、温かいストーリーは、デビュー以来変わらない、はぎいわさんの匠の技です。

 この本は、「大きくてわかりやすい絵、全部かな文字、読後感の良いお話」をモットーに作った、読み聞かせ絵本シリーズの三冊目です。既刊二冊をご紹介すると、『いぬが かいたかったのね』(サトシン/作、細川貂々(てんてん)/絵)は、ページを開くごとに、色いろな動物が出てくる楽しいお話。『おでんしゃ』(塚本やすし/作・絵)は、おでん型の電車が日本列島を走り抜ける知育絵本。三冊合わせて、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 これからも、子どもが学校に持っていって、先生といっしょに楽しめる本を、作り続けていきたいと思います。