日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『はじめての古事記 日本の神話』 竹中淑子(左)、根岸貴子(右)

(月刊「こどもの本」2013年5月号より)
竹中淑子(左)、根岸貴子(右)さん

日本神話の魅力を伝える

「古事記」編纂千三百年にあたる昨年の十一月に、徳間書店より『はじめての古事記』を出版しました。

 この本は「古事記」上巻の神話の部分のみを、小学校中級くらいの子どもが読める、やさしいお話の形に書きあらためたものです。

 天地創造に始まり、イザナキとイザナミの誕生、黄泉の国への旅、天の岩戸、ヤマタノオロチ、イナバノシロウサギと、有名なエピソードが続き、オオクニヌシの国づくり、国ゆずり、と、日本の神話最大の事件を経て、ウミサチとヤマサチで終わる、という構成になっています。

 私たち二人は、長いあいだ図書館の児童サービスや子どもの本の研究に関わってきましたが、常日頃、日本の神話を子どもに手渡すのはむずかしいと感じていました。

 昔は唱歌や大人の話などを通して、知らず知らずのうちに神話に触れていたものです。でも今はそのような機会があまりありません。

「古事記」のお話に基づいた絵本や読みものはあっても、神話のイメージから程遠かったり、すすめたいと思うものは、今の子どもにむずかしすぎたり……。そこで、原典に忠実で、しかも親しみやすい再話ができないものかと考えて、十年以上前から仕事をすすめてきたのです。

 再話にあたっては、物語の流れをたどるだけでなく、古代日本人の自然観や宇宙観を反映した、日本神話独特の魅力を伝えようと、工夫を重ねました。

 また長年お話を語ってきた経験を生かして、子どもが読み聞かせてもらったとき、イメージしやすい文章にすることも心がけました。

 この本をきっかけとして、多くの方が「古事記」に関心をもって下さることを願って、タイトルは『はじめての古事記』としました。

〝古典のお勉強〟と構えず、子どもも大人も、力強く、おおらかで、ふしぎな神話の世界を楽しんでいただければ幸いです。

(たけなか・よしこ、ねぎし・たかこ)●本書がはじめての共著。

「はじめての古事記 日本の神話」
徳間書店
『はじめての古事記 日本の神話』
竹中淑子、根岸貴子・文
スズキコージ・絵
本体1,300円