
思春期の、体の変化に戸惑うあなたへ
自分の体が嫌だ――私はそんな思いを抱えている子どもでした。
たとえば、体のパーツが気に入らないとか、運動神経が悪いのが嫌だとか、そういうコンプレックスが強いというわけではありません(あるにはありますが)。
自分が「女性」であることが嫌だったのです。
では、男性になりたいのかというと、そういうわけでもなく、願わくは、仙人のような、性的な匂いがいっさいしない存在になりたいと思っていました。
「おとなの女性」の時間をすっ飛ばして、仙人のようなお年寄りになり、縁側で俳句でも詠む暮らしをしたいとわりと本気で考えていたぐらいです(当時の私、お年寄りのイメージがだいぶ偏っていますね……)。
その気持ちは思春期の頃が一番強く、実は、おとなになった今でも、少し残っています。
体が望まない方向に否応なく変わっていくことへの、嫌悪感や恥ずかしさ。そんな気持ちを抱えた女の子の話を、デビュー前からずっと、書いてみたいと思っていて、実際書いてもいましたが、その頃はなかなかうまくいかず。このたび、ようやく、かたちにすることができました。
物語の主人公は、おとなしくて、教室の中では目立たないポジションにいる、中学生の女子・すみれ。
すみれは、見た目も中身もかっこよく、「憧れ」の存在だった同級生の女子・ひまりと、ひょんなことから親しくなり、彼女にも、体に関する悩みがあることを知ります。
そんなふたりの、友情が深まっていく過程も、楽しんでもらえたらいいな、と思います。
答えのないテーマに挑むことは、難しくもありましたが、かつての私と同じように、変化に戸惑い、自分のことを嫌いになりそうになっている、そんな子どもたちに、「あなただけじゃないよ」と寄り添えるような物語を目指しました。ぜひ、たくさんの子どもたちに読んでほしいです。
(よるの・せせり)●既刊に「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」シリーズ、『ダメ恋?』(共著)など。
ポプラ社
『おとなになりたくないわたし』
夜野せせり・作/友風子・絵
定価1,760円(税込)