日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『恐竜博物館のひみつ』 別司芳子

(月刊「こどもの本」2025年3月号より)
別司芳子さん

夜の恐竜博物館 魅力がいっぱい!

 私は『恐竜王国福井』の住人ですが、恐竜の知識は全くありませんでした。そこで一念発起して、地元の小学五年生の子どもたちと一緒に勉強することにしたのです。化石の見極め方、発掘体験、レプリカ作り、最新研究の数々。

 毎回、新しい発見がありワクワクが止まりません。気づけば三十回以上も福井県立恐竜博物館を訪れていました。

 福井で発見された恐竜たちのコーナーには、同じ地層から見つかったワニやカメの化石も展示されています。

「カメは恐竜を見ていたんだ!」

 私は恐竜も好きですが、大のカメ好きで十六年間飼育していました。

 そんなある日、展示されている甲羅の化石が二個増えていることを発見!

「えっ、これは同じ個体の化石なの?」

 まるで自分が大発見したように嬉しくて、カメ化石の研究員・薗田先生に質問のメールを送ったのが、この本を書くきっかけになりました。

 恐竜博物館には十数名の研究員の先生がいらっしゃいますが、全員が恐竜の専門家ではありません。カメ、貝、植物など多岐にわたっています。他の生物を研究することで、恐竜時代の環境を紐解くことができるのです。

 大型恐竜は絶滅してしまいましたが、カメは約一億二千万年前から、シェルターである甲羅を背負い、環境に応じて進化させながら命を繋げ、現在も生き続けています。

「なぜ、カメは生き残ったんだろう」

 カメ愛に火が点いた私は、薗田先生に取材を重ねました。

 さらに夜の恐竜博物館を見学するチャンス到来! ドーム型の天井に映し出される恐竜たちの巨大な影。背後から感じる視線。どんどん膨らむイメージを、イラストレーターのながおかえつこさんが見事に再現してくれました。

 恐竜博物館には、約四十億年前に誕生した生命の歴史が展示されています。自分もまた「ヒト」という生き物であることに気づかされます。かつて恐竜が絶滅したように、一億年後に人類が滅亡していないことを祈るばかりです。

(べっし・よしこ)●既刊に『髪がつなぐ物語』『宇宙食になったサバ缶』(共著)『元気のゆずりあい 地下室にいた供血犬シロ』など。

『恐竜博物館のひみつ』"
文研出版
『恐竜博物館のひみつ』
別司芳子・作/ながおかえつこ・絵/福井県立恐竜博物館・協力
定価1,650円(税込)