
生きものに合わせて撮り溜めた写真で本を
絵本の舞台、奄美大島はまさに生物多様性の島です。日本一と言っていいほどに生きものの種類も数も多く、そしてそれぞれの生きものたちがお互いに複雑に繋がりあって暮らしています。
2024年9月にかの有名な外来種マングースの根絶に成功するなど長い年月をかけて自然保護が進んできたおかげで、一時は絶滅が危ぶまれた生きものたちも見事に回復し、世界自然遺産にふさわしい豊かな自然が広がっています。小学校の校庭には特別天然記念物のアマミノクロウサギが現れるし、市街地で天然記念物のケナガネズミに遭遇することもあるくらいです!
1年を通して暖かく雨の多い奄美の森は、1年中さまざまな動植物で賑わっています。今回はそんな森の様子をシイの木を中心に、生きものカメラマンの松橋利光さんの鮮やかな写真で描いています。普段から仕事や趣味で生きものたちを追いかけている私にとって、松橋さんとの森での撮影は格別です。寝る時間や食事など自分たちの人間生活はほとんど全て後回しで、生きものに合わせて行動します。巣の前で戻ってくるかどうかわからないケナガネズミを一晩中待つ。もう朝になっちゃうよって頃に本当に現れてくれた時には感動で一気に眠気が吹き飛びました。樹上でドングリを食べる姿も、他の枝葉に隠れて見えにくかったりするので首が痛いのを我慢して良い瞬間が訪れるのをひたすら待つ。そうやって撮り溜めた一枚一枚を繋ぎ合わせて、私たちが見てきた森がそのまま絵本になっています!
奄美の森林の6割以上を占め、春にはほんのり甘い独特の花の香りで島中を包み込むシイの木々。豊作の秋には大量のドングリが絨毯のように森の地面を埋め尽くし、多くの生きものに食糧を与えます。また芯の強い丈夫な樹幹は鳥やネズミたちのすみかとして欠かせません。
本を開くとすぐに広がる森、次々と登場する奄美のユニークな生きものたち、シイの木を取り巻く自然の奥深さをぜひ体験してみてください!
(きもと・ゆうな)●既刊に『奄美の森でカエルがないた』『奄美の空にコウモリとんだ』『奄美の道で生きものみーつけた』。
新日本出版社
『奄美の森で ドングリたべた?』
松橋利光・写真/木元侑菜・文
定価1,870円(税込)