
キャッチボールで心をつなぐ
アメリカから日本のプロ野球界に来た選手がつけたがる背番号は、何番だかご存じですか?
答えは42。この番号は、メジャーリーグの全30球団で永久欠番になっているからです。
誰のものだったかというと――。
メジャーリーグが現在の形になってから初めて登場した黒人選手、ジャッキー・ロビンソンです。1947年に彼がデビューした頃、黒人が白人と同じグラウンドに立つことに大変な反発がありました。苦労して礎を築いた彼の功績を称え、永久欠番になっているのでした。
新刊『白い虹を投げる』の主人公、ヤヤは小学生の野球チームで頑張る6年生の女子です。父(アフリカ系アメリカ人)の名字がロビンソンなので、ヤヤは同姓のこの選手に憧れ、背番号42をつけます。同じチームの
そんなヤヤを支える、もうひとりの主人公が葉央です。葉央にも悩みがあります。足の病気で治療している弟がいて、どう接していいのかわからないのでした。葉央とヤヤは、メールで近況を伝え、〝言葉のキャッチボール〟をしながら励まし合います。
実は、この物語の重要なキーワードは〝キャッチボール〟です。
終盤には『キャッチボールクラシック』という大会が登場します。9人でチームを作って、キャッチボールの回数を競う競技で、日本プロ野球選手会が主催する実在の大会です。ヤヤも葉央も、それぞれのチームで、この大会を目指すようになるのでした。
日本プロ野球選手会事務局のご厚意で、実際に全国大会を取材させていただきました。ボールを投げて、投げて、つないでいくこの競技は、とても奥が深いのです。
大会当日に、葉央と、背番号42を背負ったヤヤはどんな球を投げるのか、見届けていただけたらと思います。
(よしの・まりこ)●既刊に『チームふたり』『ひみつの校庭』『青空トランペット』『崖の下の魔法使い』など。
Gakken
『白い虹を投げる』
吉野万理子・作/黒須高嶺・絵
定価1,760円(税込)