本を見るたびに、新たな発見を!
絵本の制作は、今までにも絵の依頼はあったものの、お話と絵の両方となると、わたしにとっては未知の領域でした。ただ、個展では動物への妄想にも似た愛が作品に出るので、この絵本にもそれが反映されていると思います。
ちなみに、猫を題材にした作品が多いので、「猫を飼っていらっしゃるのですか」と、よく聞かれますが、猫のいる生活を夢見るも猫も犬も飼った事はないのです(リスはあります)。
さて、『きょう なにたべる?』は三匹の猫が、おしゃれなキッチンでたまごを割ったり、ルンルンしながらステップをふんだり、床を汚しながら次から次へパンケーキを作ります。猫たちの後ろ姿から表情を想像したり、キッチンの音を想像したりしてもらえたらと思います。想像力をかきたてていただきたい。パンケーキの出来上がりを待つワクワク感、大量のパンケーキを積み上げて運ぶドキドキ感。もうその時には、こどもたちの口の中はパンケーキで満たされる錯覚を起こしているといいですね。猫やネズミたちが「おいしー!」と叫ぶ時は、皆さんもご一緒に!(パンケーキを大量に描いていたので、わたしはしばらく食べなくても大丈夫です)。
わたしは、幼少期、字を読むのが苦手で、絵のディテールに目が行き、そこから想像を膨らませていました。ですから、猫たちの部屋に飾られた絵や家具、小動物など、お話の本筋とは関係ないところも視覚的に色々な発見ができるようにしています。
また、この絵本ではネズミたちがパンケーキを勝手にもらっていきます。弱者強者のドタバタはなく、猫もネズミも腹一杯に食べられます。そして、ここではフードロスもございません。分かち合い、助け合い、みんなハッピーになってほしい、ただし美談のみでなくユーモアも忘れずに……といった訳で、終わり方は意表をつく展開にしました。そのヒントを探すのも楽しいと思います。
本を見るたびに新たな発見をしていただけたら幸いです。さて、わたしは今日何を食べようかな。
(まつもと・けいこ)●既刊に「本屋さんのルビねこ」シリーズ、『赤い実かがやく』(いずれも野中柊/作)など。
大日本図書
『きょう なにたべる?』
松本圭以子・作
定価1,540円(税込)