日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『あなふさぎのジグモンタと おおきなあな』 とみながまい

(月刊「こどもの本」2024年11月号より)
とみながまいさん

みんなでふさぐと たのしいな

 ジグモンタは「あなふさぎや」をしています。洋服に空いてしまった穴を塞ぐ仕事です。愛する仕事でヒトやモノを幸せにする彼に、私は憧れます。健気で誠実で一途なジグモンタ……でも、頑張りすぎがちょっと心配。

 2作目では、ジグモンタに休んでもらおう……。キャンプはどう? でもきっと、葉や実、羽毛など、穴塞ぎの材料集めに夢中になりそうです。

 家族で集まってお食事? ジグモ一族で穴塞ぎ談義が始まり、無口なジグモンタも熱く語り出すかもしれません。

 パーティーでハメを外す? どうせ誰かの服に穴が空き、塞ぎ始めちゃう。

 そうだ! 船旅に出よう! それなら、ぼんやりと海をながめる時間をすごせるはず……だったのに、ジグモンタときたらやっぱり仕事を始めてしまうのです。それどころか、とんでもなく大きな穴に立ち向かう事に。

 塞ぎきれるか想像もできない大穴を見上げて、ジグモンタはどう思ったのでしょう。足が震えるほど怖くて、でもどこかでワクワクもして……。

 私は、かつて映画の仕事をした時の撮影初日を思い出しました。大きな穴の前に立つジグモンタのように、不安と興奮が口から飛び出しそうでした。

 けれども映画は、一人で創るものではありません。俳優、撮影、美術、衣装、音楽や録音、他にもたくさんの、ジグモンタばりの技術、熱意、愛をもったメンバーが集まります。それぞれが誇りを持って創ったパーツが絡み合い、一つの織物のように物語を紡いでいく仕事です。そうやって、完成した映画をみんなで観る時の喜びは、なんとも、言葉でうまく表せません……。

 さて、大きな穴をふさぐ途中で窮地に追い込まれたジグモンタ。彼が塞いだ小さな穴たちへの想いが、みんなを動かし、彼の元に集まってきます。

 様々な個性と熱意で剥ぎあわされた穴を見て、「みんなでふさぐって、たのしい!」という喜びを、ジグモンタは味わってくれたでしょうか?

 ジグモンタにとって、それが最高のご褒美であってほしいと願います。

●既刊に『おふろそうじ きんぎょたい』『あずきのあんちゃん ずんちゃん きんちゃん』など。

『あなふさぎのジグモンタと
ひさかたチャイルド
『あなふさぎのジグモンタと おおきなあな』
とみながまい・作/たかおゆうこ・絵
定価1,430円(税込)