
学校の黒板に描きたい!
いつも通りの登校日。教室の方が何やら騒がしい……。扉を開けると、黒板いっぱいに絵が描かれています。「でかい!」「誰が描いたの?」「ここ見て!」ここでネタバラシ。作者が登場して鑑賞会。最後に作品は消され、いつもの教室に戻ってゆきます。
十年前、武蔵野美術大学の課外活動「黒板ジャック」への参加が、黒板アート制作との出会いでした。大きな作品が描けること、それを見た子どもたちの反応が魅力的で、大学の課題そっちのけで何十校と取り組みました。
当時、黒板アートは主に鑑賞するかたちで話題になっていました。それがここ数年で、日学株式会社主催の「黒板アート甲子園®」の盛り上がりをはじめ、JK文化としてテレビ番組で紹介されたり、SNSで企業による参加型企画が開催されたりして、子どもたちが「自分たちで描く」文化としても定着してきました。黒板アート作家としての私の活動も、描いてお披露目する内容よりも、技法をレクチャーする出張授業の割合が増えました。
黒板画の技法書を作るにあたってまず考えたのは、学校へお邪魔して、教室の黒板に描くべきということでした。黒板アートの魅力は、児童らにとっての日常空間で変わったことをする面白さですから、それを見てもらいたいのです。町役場に企画を持ち込みました。空き教室をお借りして、制作風景を見学してもらうという内容です。技法の紹介はスタジオ撮影でもできますが、学校で児童らとお話ししながら描く様子を紹介することは、「やってみたい」の具体性を高めます。私自身、絵を通して児童らと交流する今の瞬間にときめきながら制作していました。
本書は読むだけでも楽しめますが、やはり大きな黒板を前に、本を開きながら「みんな描こう!」。最後に消えちゃう前提の黒板アートは、気負わず取り組める絵画活動です。大作ができたら、ぜひ保護者会や学校ブログで外部に向け発表してください。絵画がコミュニケーションを生む様子を体験できます。よければ、私にも見せてくださいね。
●既刊に『みんなで描こう! 黒板アート』。
誠文堂新光社
『みんなで描こう! 黒板アート 学校行事編』
すずきらな・著/子供の科学編集部・編
定価3,080円(税込)