日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本39
大日本絵画 小川泰子

(月刊「こどもの本」2012年11月号より)
やっちゃった・・・ でも だいじょうぶ!

『やっちゃった・・・ でも だいじょうぶ!』
バーニー・ソルトバーグ/さく・え、おがわやすこ/やく
2012年9月

 このえほんの原題は『BEAUTIFUL OOPS!!』。最初、このタイトルを見て、何だか矛盾しているタイトルだと思いましたが、読んでみると、とても勇気づけられる内容でした。失敗から生まれる、新たなアート。失敗しても落ち込まないで、視点を変えて見てみると、新しい発見が見つけられるよという励ましのえほんでした。

 何回かこのえほんを読んで、ふと思い出したのが、私が小学5年生のときの担任をしていた先生。その先生は、間違えてしまった字をクシャクシャッと鉛筆で塗りつぶして、目玉を2つ付けてミノムシにしました。間違いがとてもかわいらしいアートに変わり、なんだか楽しい気持ちになれたことを今でも覚えています。間違ってそのまま落ち込むのではなく、間違ったらむしろ笑顔になれるって、とっても素敵だと思います。私にも「Beautiful Oops!」があったのです。先生だって、大人だってみんなだれでも人間なのだから、間違ったり失敗したりすることがあるということ。大切なのは、失敗しないことよりも、それをどう乗り越えるかが肝心なのだと、このえほんを読んで改めて思いました。

 時々、自分が失敗することを恐れていることに気づくことがあります。失敗したときの、がっかりした気持ちにはなりたくないという気持ちが大きくなっているのか、よりいっそう自分のガードが固くなっています。でも、一方でそうなることはこの先の人生においても避けられないのだから、それよりもそうなったらどう乗り越えるのかを考えるべきと思い、一歩を踏み出すなんてこともあります。

 何に対してもそうですが、失敗するのは嫌だから、安全な道を選んだり、挑戦しなかったり。失敗をすると、激しく指摘されたりするし、落ち込んでしまうから失敗を恐れてしまう。きっと誰にでもあることだと思います。けれども、誰にでも失敗することはあるし、そういう壁にぶち当たることで、その経験がその人自身を成長させることが出来ると思う。アートだけではなく、普段の生活のなかで「あっ、しまった、やっちゃった!」と思ったら、すぐに消して修正したり、がっかりすることなく、ちょっと深呼吸してみてください。「失敗は成功のもと」というように、きっと思わぬ発見や発想があるかもしれません。私自身も、このえほんを訳すことで勇気をもらいました。

 このえほんを読んで、大人も子どもも失敗することを恐れずに、果敢にいろんなことにチャレンジできるきっかけに、またみなさんのエールになればいいなという思いで、邦題を『やっちゃった…でも だいじょうぶ!』にしました。