日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『にらめっこだいこん』 わびみよ

(月刊「こどもの本」2022年12月号より)
わびみよさん

顔の力

 久しぶりに友達の家を訪ねたときのことです。小さな子供に「いないいない」で顔を隠せば不安な顔になり、「ばあ」で変顔を見せると笑顔に早変わり。小さな子は人の顔をよくみているなとしみじみ感じました。笑顔に浮かれた私は「今度の絵本の題材はにらめっこにする」と決めたのです。当時、コンクールへの応募を始めて5年が経ち、なかなか出版の糸口が掴めず迷っているところでしたが「子供が笑顔になる絵本を描く」という具体的な目標ができました。

 そして、にらめっこの絵本を描くのなら、主人公の顔面にインパクトが必要だと考えました。自分のレパートリーの中で、インパクトのある顔面といえば、厳めしい顔をした野菜のキャラクターです。

 この厳めしい顔のルーツは高校時代の漢文にあり、当時、漢文の教科書に載っていた『史記』の「鴻門之会」が大好きだったので、資料に載っている項羽・劉邦などの顔をよくラクガキしていました。描き続けるうちにもとの顔とは大きく離れたものになりましたが、描きなれた愛着のある顔です。

「よし、あの顔だ! 土から生えただいこんがあの顔でにらめっこしたら、きっとおもしろいぞ」

 いざ絵本を描き始めたら、今までで一番するするとストーリーが思い浮かび、表情を描くことも、とても楽しかったです。

 完成した『にらめっこだいこん』は、和歌山県有田川町の「有田川町絵本コンクール2021」で優秀賞と有田川賞をいただきました。授賞式の懇親会では、有田川町の皆さんの受賞作へのコメントを放映していただき、「この顔が好き!」や「わたしはこっちの顔が好き!」と小さな子供から大人まで楽しんでくれている様子を拝見して、とても嬉しく温かい気持ちになりました。

 顔の力ってすごいですね。

●本書が初めての著作。

『にらめっこだいこん』
ひかりのくに
『にらめっこだいこん』
わびみよ・作・絵
定価1,078円(税込)