こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ34
『だいじょうぶかな いちねんせい』 ひかりのくに

(月刊「こどもの本」2022年8月号より)
『だいじょうぶかな いちねんせい』

ワクワクドキドキを乗せてバスは行く

くすのきしげのり 作/うめだちづる 絵
2022年2月刊行

 2019年春、私と〝ドキドキ〟を乗せたバスはくすのきしげのり先生のいる徳島へ向けて鳴門海峡を渡っていました。初めての打合せに緊張していた私がバスから降りると、くすのき先生は絵本の中の白鳥先生のようにやさしい笑顔で迎えてくださいました。

 新一年生の期待と不安に寄り添う、親子で安心して楽しめる絵本を書いていただきたい。するとくすのき先生からどんどん〝ワクワク〟が生み出されていき、帰りのバスは〝ワクワク〟でパンパンに膨らんでいました。

 山のクマとサルと人間の子どもをかわいくコミカルに描き、美しい里と山の風景で包む。そんな絵を描いてくださるのはこの方しかいない! くすのき先生とは初顔合わせになるうめだちづる先生に絵をご依頼することとなりました。

 2020年春。桜の舞い散る入学式のラフがあがったその頃、問題が発生しました。

「新学期9月問題」

 新型コロナウイルスの影響で浮上したこの問題は〝ドキドキ〟どころか〝ドッキリ!〟でした。入学式が9月となってはお話の前提が変わってしまう! 冬眠から目覚めたばかりの寝ぼけたクマの子を、真夏に元気に川遊びをするクマの子に変えなければならないし、桜の花びらに鼻をくすぐられてくしゃみがでそうな場面を、校庭に砂ぼこりがおこるように描きなおさないと! この時期、多くの出版社でも同様の悩みを抱えられたことと思います。

 コロナ禍が長引いたおかげで、「新学期9月問題」は消え、やっと企画が再開した2021年春、私と〝ワクワク〟を乗せたバスは大分県の由布岳の麓を走っていました。自然豊かな湯布院のうめだ先生のお宅は、お庭に野生動物が訪れるという、まるで絵本の世界のような環境にありました。本書の小学校近くの風景は湯布院の風景とそっくりです。

 秋に編集部に届いた絵はあまりに美しく、くすのき先生も編集部も、ただただ溜息しきりでした。こんなにきれいな絵を本の中にしまっておいてはもったいない! 発売に合わせて複製画でのパネル展を書店にご提案したところ大好評をいただきました。

 こうやって作り手も〝ワクワク・ドキドキ〟で作った絵本ですから、読者の心が動かないはずはありません。

 2022年春、続編の打合せのため、つよし君としずかちゃんの〝ワクワク〟を乗せてバスは鳴門海峡を渡りました。大人気シリーズに化かすため、今日もタヌキのダイゴロウの術は日本中にかけられています。

(ひかりのくに 宮田真早美)