日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『とびだす!ちょう』 たかぎみわこ

(月刊「こどもの本」2022年3月号より)
たかぎみわこさん

ポップアップえほんで心躍る体験を

 本書は「とびだす!」と始まるタイトルの通り、全てのページで、蝶がとびだしてくるポップアップえほんです。

 蝶は私にとって、特に子ども時代には身近な昆虫でした。自宅の庭や、公園、道すがら、様々な場所でふと出会うことができると、四つ葉のクローバーを見つけたときの感覚にも似た、小さな幸せに出会えた気がしました。それは、蝶の美しい羽の色や模様、さらにはその姿で空をひらひらと舞う様子、なんだか現実のものとは思えない、どこかファンタジーの世界に触れたような、不思議な、そして嬉しい気持ちになったものです。

 このえほんを見たとき、そんな気持ちを思い出しました。20センチほどの小ぶりなえほんを開くと、美しい蝶が3Dで現れます。大きな美しい羽をたずさえ花のミツをすう姿や、ページいっぱいに、驚くほど大きな世界最大の蝶がとびだす場面、無数の蝶の群れが空高く飛んでゆく姿 ——。まるで目の前に本物の蝶が現れたような、わくわくする体験を味わうことができます。

 身を守るため、羽の色や模様を役立てる蝶もいて、表と裏でまったく違った見た目の羽を持つものもいます。本書では、ページをめくる動きに連動し羽が開閉することで、羽の表と裏、色や模様の違いを見ることもできます。限られた場所にしか生息しない、珍しい種類の蝶も登場します。この小さな本を開けば、国内で自生している姿を見ることができない蝶にも、会うことができるのです。

 擬似体験ができることは、本の魅力のひとつだと思います。そして、この本の特徴はポップアップえほんということです。読み手がページをめくると、紙で再現された蝶たちが、目の前に実際にとびだしてくる。実態を伴ったこの感覚が、子ども時代に蝶に出会ったときの気持ちを思い起こさせたのかもしれません。読者の方にも、ぜひこのわくわくする気持ちを体感していただけたら嬉しく思います。

●3月刊行予定の訳書に『CはCatのC』。

『とびだす!ちょう』
大日本絵画
『とびだす!ちょう』
モニカ・ガロファロ・絵/ローラ・コーワン・文/たかぎみわこ・訳
定価1,870円(税込)