日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『キリンのなやみごと』 岡野 佳

(月刊「こどもの本」2022年1月号より)
岡野 佳さん

じぶんを変える勇気をくれる

 じぶんに自信がない私は、とにかく写真が苦手。だから、あたりまえのように顔写真をアイコンにしろと要求してくるSNSとはできるだけ関わりあいにならないように暮らし、どうしても登録しなければいけない場合には、動物の写真などで凌いでいます。

 こんな性格の私は、『キリンのなやみごと』の原書 〝Giraffe Problems〟を読んだとき、じぶんの首に自信がもてないキリンのエドワードにとても共感しました。「あっちから、こっちから」、ジロジロ見られては、容姿について悪口を言われているような気がしてしまう。そのせいで、誰かに声をかけるのも怖くなる。当然ながら、友だちはできません。でも、仕方がない、こんなじぶんなんだもの……と、あきらめて殻に閉じこもる。「あれ? どこまでがエドワードのことだっけ」と首を傾げてしまうほど、気づくと感情移入していました。

 このエドワードが変わるきっかけは、じぶんの短い首を好きになれないカメのサイラスによってもたらされます。サイラスがエドワードに、首が長くないとできないことをお願いするのです。おかげで、エドワードは生まれて初めて頼りにされるという経験をして、じぶんに自信がもてるようになります。そして、ふたりはお互いの良いところを見つけあい、友だちになります。このお話は「キリンの」という題名ですが、エドワードとサイラス、どちらも主人公なのです。

 人づきあいを避けていれば、傷つくことはありません。しかしそれでは、エドワードがサイラスと出会ったように、じぶんの良さを認めてくれる人に巡り会うこともありません。

 勇気をだして、誰かと関わろうとしても上手くいかないことも多いでしょう。それでも、きっといつか、共感して、尊重しあえる人に出会える。そう信じて、一歩を踏みだし続ける背中を押してくれるのが、この絵本。私自身、翻訳しながら、人づきあいをがんばってみようと勇気をもらえた大切な1冊です。

(おかの・けい)●同時刊行の訳書に『ペンギンのこまりごと』。

『キリンのなやみごと』
化学同人
『キリンのなやみごと』
ジョリ・ジョン・さく/レイン・スミス・え/岡野 佳・やく
定価2,090円(税込)