日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『びわ色のドッジボール』 もりなつこ

(月刊「こどもの本」2022年1月号より)
もりなつこさん

おはなしのピースたち

 ある日遊びに行った鹿児島県垂水市。びわの栽培がさかんな地域で、道の駅の棚には、優しいオレンジ色のびわがパックされ、ずらりと並んでいました。その見事な光景と、夕日がしずむ桜島の写真とを一緒にフェイスブックに投稿すると「びわ色の夕日だね」という素敵なコメントをいただきました。

 また別の日に、当時働いていた児童クラブでおしゃべりしていたら、ひとりの子が垂水にいる曾祖父母がびわの栽培をしていて、ゴールデンウィークに自分たちも手伝いにいったということを話してくれました。あの日、お店に並んでいたびわの中にはその子が手伝ったものがあったのかもしれないとほっこりした気持ちになりました。

 そんな「びわ」に関するピースがちょこちょこと集まってきたとき、別の子から「お兄ちゃんが不登校で家にいるんだ」ということをききました。

 ふと頭の中に夕日を見つめている男の子がうかびました。夕日をみながら何を思っているんだろう。どうしてそこにいるの? 誰と?

「びわ」「夕日」「不登校」。一見バラバラのピース。でもそれがパチリパチリとはまっていく感じがしました。

 学校や友達との関係、色々な事情で不登校になってしまう。そんな時、何かしらの選択肢があればいいな。誰かがそれを教えてくれたらいいな。そんな願いとともに生まれた物語が「びわ色のドッジボール」です。

 私にとって11年ぶりの新刊。丹地陽子さんに美しいイラストを描いていただき、世に出ることができました。

 ここに至るまでお世話になった方々、支えてくれた創作仲間には感謝の気持ちでいっぱいです!

 これまでも、子どもに関わるお仕事をしながら、創作をしてきました。これからも地道な活動を続けていくと思います。そんな中、少しずつ集まっていくおはなしのピースたち。今も私の手の中にはいくつかあります。それらから新しい物語が生まれる日がきますように。そして次は11年かからず世に出ますようにと、願っています。

●既刊に『風よ! カナの島へ』『おじいちゃんとカッパ石』。

『びわ色のドッジボール』
文研出版
『びわ色のドッジボール』
もりなつこ・作/丹地陽子・絵
定価1,540円(税込)