日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『多摩川のおさかなポスト』 山崎充哲

(月刊「こどもの本」2012年8月号より)
山崎充哲さん

生きていていいンだよ。

 捨てられた外来魚だからと、殺されてもよい命などありません。命はみんな大切なんだよ。人間の身勝手から守ってあげるね。日本の魚と外国の魚たちの悲劇を子どもに判りやすく書きました。

 多摩川にはいろんな種類の外来魚や外来カメがたくさん棲んでいます。その外来種達は、自分で外国から泳いできたわけではありません。熱帯魚は泳ぐ宝石とか、癒しとか言われます。キレイだったり珍しかったりで、外国からどんどん輸入され、熱帯魚ショップやホームセンターでたくさん売られています。買ったときには10センチくらいのかわいかった小さな魚がだんだん大きくなって、50年も長生きをして、1メートルを越えるなんて……。五百円玉サイズのミドリガメが数年でA4サイズくらいに育ち、噛みつかれると指を何針か縫うくらい、凶暴になってしまうカメもいたりします。

 飽きたから捨てる。大きくなりすぎたから捨てる。お金がかかるので捨てる。ケンカして傷が付いたから捨てる。病気になったから捨てる。東日本大震災で水槽から水がこぼれたから捨てる。全て人の都合と身勝手で捨てられています。

 魚やカメは犬や猫よりもずっと寿命が長いンです。100年をゆうに越える長寿もいます。人間よりも長生きする生き物を、ペットショップで簡単に手に入れることはできますが、飼う人がそれなりに勉強してからでなければ、飼育することは難しいのです。

 川に熱帯魚やカメを捨てる前に、ちょっと考えてみてください。多摩川には「おさかなポスト」がありますから、持ってきてくれれば殺さずに里親さんを捜しますが、他の川ではそうはいきません。基本的には外来種駆除は殺すことを目的としています。保健所は法的に魚やカメは扱えません。ペットショップに持ち込んでも、価値がなければ殺処分です。ペットとして飼い始めたら、寿命をまっとうするまで飼い続けてあげることが大切です。

(やまさき・みつあき)●既刊に『いのちの川 魚が消えた「多摩川」の復活に賭けた男』『タマゾン川 多摩川でいのちを考える』。

多摩川のおさかなポスト
星の環会
『多摩川のおさかなポスト』
山崎充哲・文
小島祥子・絵
本体1,300円