日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『絶対好きにならない同盟 ~甘いヒミツがある、あいつのこと~』 夜野せせり

(月刊「こどもの本」2021年9月号より)
夜野せせりさん

「ままならなさ」を描く"恋愛もの"

 中学生が主人公の話をずっと書きたいと思っていました。

 というのも、私自身、中学生時代が一番感情の色が鮮やかで、起伏があって、常に怒ったり泣いたり笑ったりしていたから。

 悩みもたくさんあって、そのほとんどは答えが見つからないまま、今も心の中でくすぶっています。そして、それが創作の燃料となっています。

『絶対好きにならない同盟』は、念願の、中学生女子が主人公の話です(しかも、複数主人公になる予定)。

 さまざまな理由で「恋愛なんて絶対しない!」と思っている女の子たちが、思いとは裏腹に誰かを好きになったり、あるいは好きにならなかったり……というストーリー。

 私も思春期の頃、まわりの友達がみんな「好きな人」の話をし始めたのについていけず、「好きな人はいない」と言えば「嘘ばっかり」と決めつけられ、辟易としていた時期がありました。

 勢いあまって、「将来私は誰とも結婚しない!」と宣言していたこともあります。

『絶対好きにならない同盟』の女の子たちの事情は、かつての私とはもちろん異なります。

 今回の主人公の真帆ちゃんは、初恋の人にひどい振られ方をしたことがトラウマのようになっています。

 そこに「とある秘密」のある男の子が現れて、彼の不器用な優しさに、真帆ちゃんの心は揺れ動きます。

 私が恋愛ものを書く理由は、「人の心はままならない。自分の心もままならない」ということを、一番表現しやすいジャンルだからなのかな、とこの頃思います。

 もちろん、「ままならなさ」だけではなく、エンタメらしく、キラキラした要素もまぶしています。

 そして。キュンとする恋の話の中に、実は、こっそりほかのメッセージも忍ばせています。

 ちゃんと伝わるかなと、今からドキドキしていますが、ぜひ子どもたちに読んで確かめてもらいたいです。

(よるの・せせり)●既刊に「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」シリーズ、『星名くんは甘くない』など。

『絶対好きにならない同盟
集英社
『絶対好きにならない同盟 ~甘いヒミツがある、あいつのこと~』
夜野せせり・作/朝香のりこ・絵
定価704円(税込)