日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おじょうさま小学生はなこ VSにがてなてつぼう』 川之上英子

(月刊「こどもの本」2021年9月号より)
川之上英子さん

小学校生活VSはなこ

 何この急に目の前にあらわれたハードル、ささいなことなのに、悩ましい!ということ、大人にだってありますよね。小学生ならなおさらではないでしょうか。『おじょうさま小学生はなこ』は、普段は執事やお手伝いさん達に囲まれ、蝶よ花よの暮らしをしている「はなこ」が、小学校生活において容赦なくあらわれる小さな(本人にとっては大きな)ハードルと戦う話です。そのため毎回副題に「VS」がついており、今回は「はなこVSにがてなてつぼう」と「はなこVSいとうくんにかりたかさ」、ふたつのお話となっています。

「はなこ」は超マイペースで、先生の話もそこそこに帰り支度をはじめますし、たえず学校を2、3週間休んでプライベートジェットで気ままなバカンスに繰り出したいと思っており、「小学生もラクじゃないわね」が口グセです。そんな「はなこ」の、ゆるい戦いっぷりが、お子さんたちの気持ちを少しでもラクにしてくれたらいいなと思っています。できれば悩みなんて全部吹き飛ばしてあげたいのですが、せめてくすりと笑って、日々出現するハードルと戦っているのも私だけじゃないのね、と思ってもらえたら嬉しいです。

 執筆にあたっては、お金持ちなことも、そうでもないことも、小学校が好きなことも、そうでもないことも、勉強が得意なことも、そうでもないことも、みんなから人気があることも、そうでもないことも、「上下じゃなくて、ヨコ」といいますか、タテの物差しをあてるのではなく、「多様性」と思ってもらえたらいいな、という気持ちで書いています。

 本来の良質な童話とはアプローチが少し違うかもしれませんが、お子さんの未来が明るく豊かであるようにという願いは同じです。普段がんばっているお子さんたちが、この本を読む時、リラックスしきった顔で、口元をゆるめながら読んでくれたりしたら、筆者としてこれ以上ありがたいことはありません。

(かわのうえ・えいこ)●既刊に『おじょうさま小学生はなこ VSりんじのしいくがかり』『おおやまさん』『ももも』など。

『おじょうさま小学生はなこ
岩崎書店
『おじょうさま小学生はなこ VSにがてなてつぼう』
川之上英子、川之上 健・作絵
定価1,210円(税込)