日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『おとうさんはぜったいにしなない』 あさおよう

(月刊「こどもの本」2021年9月号より)
あさおようさん

お父さんはずっとそばにいるよ

「お父さん ボク これずっと大事にするからね。お父さんが死んでも、天国で見守っててね」

 ある日突然4歳の息子が・お父さんが死ぬこと・にハマりだしました。

 冒頭のセリフは、本来とっておきの言葉。すごく大切な物をあげたときに言われたとしたら、お父さんも胸を打たれたことでしょう。

 でもお散歩中にたまたまやったカプセルトイの・果物怪人シリーズ・。ブドウ怪人抱きしめながら、潤んだ瞳で言われても、お父さん困っちゃうよ。

 事あるごとに「天国で見守っててね」と言う息子に、毎回「大丈夫。お父さんは死なない。君がおとなになるまで死なないよ」と伝えるのですが「でもでも」と納得してくれません。

 そして、あんまり何度も言われすぎるものだから、そのうち自分でも心配になってきて「もし自分が死んだら、この子大丈夫かな」と考えるようになっていました。

 その頃の私はまだ絵本作家を目指している途中。コンペに出しても箸にも棒にもかからぬ絵本を、息子たちにあげていました。息子たちは手作りの絵本をとても喜んでくれて私の心の支えでした。そしてある日、落選した手作り絵本をあげた時。やっぱり息子はこう言ったのです。

「お父さん ボク これずっと大事にするからね。お父さんが死んでも、天国で見守っててね」

 そのとき、このままではイカン! と思った私は、息子と約束をしました。

「君がなんで・お父さんが死んじゃうこと・にハマってしまったかは、お父さんにはわからない。でもお父さんが、たとえ隕石が降ってきたとしても・ぜったいにしなないお父さん・の絵本を作ってあげる。だからもう、お父さんが死んじゃう! と泣くのはやめなさい」

 その言葉で、ようやく納得してくれた息子。そして4年後できたのが、この絵本です。子どもたちに「貴方の大切な人はずっとそばにいるよ」と伝えるために。

(あさおよう)●既刊に『トカゲのともだち』『じごくのさんりんしゃ』。

『おとうさんはぜったいにしなない』"
フレーベル館
『おとうさんはぜったいにしなない』
あさおよう・作・絵
定価1,540円(税込)