日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ライオンごうのたび』 森岡督行

(月刊「こどもの本」2021年6月号より)
森岡督行さん

人生の役割の一つを果たせた夢の絵本

このたび、『ライオンごうのたび』という、はじめての絵本を出版させていただきました。この絵本は、今から十年ほど前、自分の長女が小学校に入学するときに、長女のためにつくった話がベースになっています。

私は、小学校、中学校、高校と、もしかしたら、勉強はした方かもしれないけれど、あまり楽しんで学習はしていなかったように思います。テストのための勉強だったり、いやいやながらの宿題だったり。学校の勉強の意味がわかったのは、ずいぶん大人になってからでした。世界は不思議なことにあふれていて、謎を探っているうちに、算数や理科、歴史などができていったのではないかと。もう少し、はやくこの視点に気づいていたら、つまらないと思っていた勉強が、おもしろくなったにちがいない。そんな風に考えながら、この話を書きました。

このことを、イラストレーターの山口洋佑さんに話したのは、いまから七年前でした。山口さんは、話の内容に共感してくださり、すぐに絵本にしようという流れになりました。私は、山口さんのイラストが大好きだったので、そこから、ストーリーがふくらんでいきました。例えば、この絵本には、気候変動のアクションを促すメッセージを込めたのですが、それははじめにはなかった観点でした。

果たして、二〇二一年二月、『ライオンごうのたび』は出版されました。同時に開催した出版記念展は、コロナ禍に即して、消毒と換気につとめて行いました。はじめての絵本を実際の読み手、子ども達に手渡して思ったのは、すこし大袈裟ですが、人生の一つの役割を果たせた、という感慨です。この絵本を読んだ子どもが、どんなふうに成長するのか、知りたいという気持ちも芽生えました。

長女はもう高校生。絵本を見て「夢が叶った」と言いました。これは私の気持ちと一緒ですし、きっと山口さんもそうだと思います。たくさんの人に愛される絵本になってほしいです。

(もりおか・よしゆき)●「一冊の本を売る書店」がテーマの森岡書店代表。既刊に『荒野の古本屋』など。

『ライオンごうのたび』"
あかね書房
『ライオンごうのたび』
もりおかよしゆき・さく/やまぐちようすけ・え
定価1,540円(税込)