日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『拝啓パンクスノットデッドさま』 石川宏千花

(月刊「こどもの本」2020年11月号より)
石川宏千花さん

YA+衝動

 担当編集さんと、さあ、なにを書きましょうか、となったとき、ダメ元で、「音楽というか、パンクが題材のお話ってどうでしょう?」と切り出してみました。ここで、「パンク……?」という反応が返ってきていたら、『拝啓パンクスノットデッドさま』をこの場でご紹介することはできていませんでした。「いいですね、パンク! 実は、ぼくも音楽ものはどうですかってお話しするつもりでいたんです」といっていただけたこと、そして、担当編集さん自身もまさかのパンク好きだったことから、児童書らしからぬ、【YAパンク小説】を書かせていただけました。 ちなみにパンクというのは、70年代半ばに生まれたロックのスタイルのひとつで、逆立てた髪に、スタッズのついた革小物、ボロボロのTシャツを身につけて、ノーフューチャー! と叫ぶ若者たち、というあたりが一般的なイメージかと思います。好き嫌いがわかれるジャンルです。

 しみじみ、児童書の題材として受け入れてくださった担当編集さんをはじめ、くもん出版の方たちは度量が大きい! としかいいようがないのですが、思春期にパンクを通ってきた大人のひとりとしては、これほどYAとの相性がいい音楽、カルチャーはないんじゃないのかな、と思っています。たとえ、いまの時代のものではなくなってしまっていても、その精神性は永遠に十代のものだし、多くのYAで描かれてきたものに通じていると感じるからです。同時に、わたし自身が書く物語にも、宿っていてほしいと願ってやまないものでもあります。

 装幀も、一目でパンクを感じてもらえるものになりました。書名を忘れて書店にいっても、パンクっぽい表紙の、といえば、伝わるかもしれません。

 題材は変わり種でも、描かれているのは、高校一年生と中学二年生の兄弟が過ごす日々の中の、普遍で不変なものばかりです。どうぞお気軽に、お手に取っていただければ! です。

(いしかわ・ひろちか)●既刊に『青春ノ帝国』『わたしが少女型ロボットだったころ』「少年N」シリーズなど。

『拝啓パンクスノットデッドさま』"
くもん出版
『拝啓パンクスノットデッドさま』
石川宏千花・著/西川真以子・画
本体1,400円